【30秒でわかる】コウモリの「日中休眠」と家の被害
- ただの昼寝ではない「省エネ待機モード」
- 日中休眠(トーパー)とは、体温を周囲の温度近くまで下げ、代謝を抑えてエネルギー消費を劇的に減らす、コウモリ特有の生存戦略です
- 断熱材は「最高級のベッド」
- 外敵がおらず温度が一定に保たれた「断熱材(グラスウール)の隙間」は、信州の寒暖差を生き抜く彼らにとって、この上ない快適な寝床となります
- 「カサカサ音」は閉じ込め注意のサイン
- 壁の中で音がするのは、そこで日中休眠している証拠です。この状態で安易に出入り口を塞ぐと、逃げ場を失ったコウモリが壁内で餓死し、腐敗やダニ発生の原因となります。
コウモリの昼間の活動、日中休眠とはなにか?
日中休眠(にっちゅうきゅうみん)の定義
こんにちは。長野県でコウモリの生態調査と野生生物の建築物侵入メカニズムを専門に研究している、かわほりプリベント代表の山岸淳一です。長野県におけるコウモリ・野生動物対策の専門研究機関として、科学的エビデンスに基づいた正確な情報をお届けします。
今日は、昼間はコウモリなにしてんだろうという疑問に答える回、日中休眠のお話です。
日中休眠(にっちゅうきゅうみん)とは、夜行性であるコウモリが、日の出から日没までの明るい時間帯に特定の場所で活動を停止し、休息をとる状態を指します。
英語では(デイリー・トーパー / Daily Torpor)といいます。
住宅で言うと、天井裏などで昼間にコウモリがいる状態のときにおきる状態です。
実務においてこの知識が不可欠な理由は、住宅のコウモリ住み着きの相談がほぼ「コウモリ被害の現場=日中休眠の場所」だからです。
コウモリは外敵を避け、温度が安定する場所を好みます。
日本の住宅においては、瓦の隙間、通気口、壁の内部。そして天井裏や屋根裏、ベランダの手すりや笠木の中などがその対象となります。
単に「そこに居る」という事実以上に、専門家が注目するのは「なぜその場所が休眠場所に選ばれたのか」という点です。

駆除業者に依頼時及び駆除業者施工時の注意点
日中休眠の場所を正確に特定できなければ、追い出し作業後の封鎖箇所を誤り、結果として再侵入を許すことになります。
コウモリ駆除業者が施工を行う際も、この日中休眠の習性を理解していないと、知らずにコウモリを壁の中に閉じ込めてしまい、死骸による異臭やダニ被害という二次災害を招くリスクがあるのです。
かわほりプリベント山岸淳一の現場考察~長野県のコウモリ対策の現場から~
信州の過酷な寒暖差が「高断熱住宅」をコウモリの聖域に変える
長野県特有の激しい寒暖差は、アブラコウモリの「日中休眠」の場所選びに決定的な影響を与えています。
私が現場で目にするのは、人間が快適さを求めて進化させた高気密・高断熱住宅が、皮肉にもコウモリにとって「究極のシェルター」となってしまっている現実です。
断熱材という「最高級の寝具」
信州の夏、直射日光に晒される瓦下の温度は猛烈に上昇しますが、そこから一歩内部へ入り込めば、住宅の断熱材が外気温を遮断してくれます。
コウモリたちは、断熱材と天井板の間、あるいは断熱材と内壁の隙間に潜り込みます。
ここが彼らにとって、外敵から守られ、温度変化の少ない「最高級の寝床」となるのです。
お客様が「壁の中でカサカサ音がする」と仰る場合、その裏では、断熱材の恩恵を受けたコウモリたちが日中休眠を謳歌しているケースがほとんどです。
「1センチの隙間」への異常なまでの執着
アブラコウモリの休眠場所選びで特筆すべきは、入り口となる隙間の「狭さ」へのこだわりです。
彼らは広すぎる空間を好みません。1センチ程度の、人間から見れば「ただの目地」や「通気口の僅かな歪み」を、彼らは安全な通路として正確に見抜きます。
この「狭さ」こそが、捕食者の侵入を防ぐ天然のセキュリティゲートとして機能しているのです。
2025年、長野県内で目撃した「300頭の衝撃」
私が2025年に長野県内の現場で直面したのは、一箇所に300頭を超えるアブラコウモリが密集して日中休眠を行っていた事態でした。
これほどの規模になると、もはや単なる「ねぐら」の域を超え、地域一帯のコウモリが集結する「巨大コロニー」と化しています。
これほどの密集が起こる背景には、長野の厳しい冬を越すための情報共有や、休眠中の体温維持といった生存戦略が隠されています。
しかし、建物へのダメージは計り知れません。糞尿による断熱材の汚染や異臭、そして天井板へのシミ出し。これらは、日中の彼らの静かな「休眠」からは想像もつかないほど甚大なものです。
結論:プロに求められるのは「1センチ」を見抜く眼力
日中休眠の習性を理解していれば、追い出し後の対策がいかに精密でなければならないかが分かります。
1センチの隙間を見逃すことは、彼らに「戻ってきて良いですよ」と言っているのと同じです。 信州の住宅を守るためには、生態を知った上での「現場の眼力」が不可欠なのです。
FAQ:コウモリの日中休眠に関するよくある質問
アブラコウモリは日中、外敵に見つかりにくく温度が安定した場所で休眠します。
住宅では、屋根瓦の下、通気口、外壁の張り合わせ目、あるいは高断熱住宅の壁内部や断熱材と天井板の間などが代表的なねぐらとなります。
その可能性が高いです。
アブラコウモリは日中休眠の場所として、断熱材と内壁の隙間を好みます。
特に長野県のような寒暖差の激しい地域では、断熱性能の高い壁内が絶好の寝床となり、コウモリが移動する際の振動や爪の音が「カサカサ」という異音として室内に響くことが多くあります。
絶対に避けてください。
日中は「日中休眠」の最中であり、隙間の奥にコウモリが潜んでいます。
そのまま封鎖すると、コウモリを壁の中に閉じ込めることになり、脱出を試みて室内に現れたり、壁の中で死んで激しい腐敗臭やダニの大量発生を招く原因となります。
必ず専門家による追い出し作業を行ってから封鎖する必要があります。
参考文献
Funakoshi, K., & Uchida, T. A. (1978). Studies on the physiological and ecological adaptation of temperate insectivorous bats: III. Annual activity of the Japanese house-dwelling bat, Pipistrellus abramus. Journal of the Faculty of Agriculture, Kyushu University, 23(1/2), 95–115. https://doi.org/10.5109/23682
López-Baucells, A., Rocha, R., Fernández-Llamazares, Á., Adrià, B. M., Guaita-Casas, E., Jakobsen, L., … & Cabeza, M. (2017). Roost selection by synanthropic bats in rural Madagascar: what makes non-traditional structures so tempting? Acta Chiropterologica, 19(1), 127–140. https://doi.org/10.3161/15081109ACC2017.19.1.010
この記事の執筆者・監修者
山岸 淳一 (Junichi Yamagishi)
かわほりプリベント代表。長野県を拠点に、コウモリや野生動物の研究をしながら、駆除対策の依頼には直接現場で対応している。動物と人間との間に生じた曖昧な境界線を整えることが使命。研究の専門領域は、長野県に生息するコウモリの生態研究(特に上高地や乗鞍高原など山岳地帯の希少種コウモリ)と、コウモリや野生生物の住宅や建築物への侵入メカニズムの解析研究。ハウスメーカー住宅から大学病院、重要文化財、古墳まで駆除対策の実績多数。SBC信越放送ラジオ「かわほり先生の生き物万歳」(毎月第4木曜)にレギュラー出演中。三度の飯よりコウモリが好き。
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