見慣れないフンは、動物からの重要なサインです
庭やベランダ、天井裏で見慣れないフンを見つけると、不安になりますよね。そのフンは、家に侵入した動物の種類を特定する、最も重要な手がかりです。このページでは、実際のフンの写真を元に、その正体を見分ける方法を専門家が詳しく解説します。
野生動物のフン 写真ギャラリー:あなたの家のはどれ?

ハクビシンのフン
長野県塩尻市で撮影。果実を多く食べたことがわかる大量の種子が含まれており、屋内への侵入や衛生リスクの判断材料となる。

ネズミのフン
長野県諏訪市の住宅床下で撮影。小型哺乳類の活動痕として代表的で、構造材や保温材の被害が進行している兆候といえる。

イタチのフン
長野県松本市の住宅天井裏で撮影。先端が細く曲がり、毛や骨片が含まれるのが特徴。肉食傾向が強く反映される。

コウモリのフン
長野県伊那市の住宅2階ベランダで撮影。乾燥して崩れやすい状態で多数確認され、軒下や換気口付近でのナイトルースト(夜間の休息)が推察される。

テンのフン
長野県松本市の建物内部で撮影。果実を多く食べた痕跡が見られ、赤褐色のペースト状に種子が混ざる特徴的な形状をしている。

シカのフン
長野県塩尻市で撮影。典型的な球状のペレット型で、乾燥し硬くなっています。周囲の環境情報と合わせ、出没の状況を判断します。

イノシシのフン
長野県立科町の草地で撮影。食べた植物の繊維が多く含まれており、排泄直後と見られる柔らかい状態で不定形。

イタチとネズミのフン(比較)
長野県松本市の住宅天井裏で撮影。両者のサイズ・質感の違いが明瞭に比較できる。イタチはネズミを追って侵入するため、同じ場所にあることは普通。

ヤモリのフン
長野県池田町の住宅外壁で撮影。黒いフン部分と白い尿酸塩がセットになっており、コウモリの糞と間違えやすい。

カエルのフン
長野県池田町で撮影。形状はコウモリの糞と酷似するが、指で触れるとコウモリの糞よりスカスカしている。崩れ方や重量感から判別可能。
フンによる実際の被害事例

ハクビシンによる天井裏の深刻なフン害
長野県松本市で撮影。断熱材の上に大量の糞が堆積し、カビの繁殖が確認できる。長期的な侵入による深刻な衛生問題の一例です。

コウモリによる天井裏の広範囲な糞害
長野県安曇野市で撮影。断熱材の上に広範囲に糞が堆積しており、長期間にわたり群れで営巣していたことがうかがえる深刻なケースです。

コウモリによる窓枠へのフン付着
長野県南箕輪村で撮影。窓の外枠に多数の糞が付着しており、コウモリが窓上部にナイトルースト(夜間の休息場所)として滞在していたことが示唆されます。
フンに関するよくあるご質問
- 庭やベランダに黒くて細長い糞が落ちていました。どんな動物の可能性がありますか?
- 糞の大きさや形、内容物、場所によって、イタチ・ハクビシン・テン・ネズミなどが考えられます。写真や特徴をもとに識別できます。
- 小さな黒い粒が床に落ちていました。ゴミか動物の糞か見分ける方法は?
- 糞は独特の臭いがあり、内容物(毛・種・昆虫片など)が混じることが多いです。ゴミは無臭で均質なことが多いです。
- 動物の糞を見つけましたが、放置しても問題ありませんか?
- 放置すると感染症や悪臭、建物の劣化の原因になるため、早めに適切な処理と消毒を行いましょう。
- 野生動物の糞を安全に掃除・消毒する方法は?
- 手袋とマスクを着用し、糞を密閉して廃棄、石けんと流水で手洗い、必要に応じてアルコールや塩素系消毒剤で清掃します。
- 何度も糞が見つかります。動物の侵入経路や再発防止策は?
- 屋根裏や壁の隙間、換気扇、床下などを点検し、金網やパテで塞ぐ、餌になる生ごみを屋外に放置しない、忌避剤を使うなどが有効です。
- 動物の糞で健康被害はありますか?
- 一部の糞には細菌や寄生虫、ウイルスが含まれ、感染症やアレルギーの原因になります。特に小児や高齢者、免疫力が低い方は注意が必要です。
専門家の現場ノートコラム
山菜採りと、ウンチ探し
長野県に住んでいると、野生動物の駆除対策の仕事をしている場面だけでなく、ごく普通の暮らしの中でも、野生動物のフンに出会うことがあります。
春になると、たとえば八ヶ岳山麓沿いの道路では、路肩に車を止めて、山菜採りをしている人をよく見かけます。春の風物詩ですね。ワラビ、おいしいですよね。僕も好きです。とはいえ、僕はその横で、山菜には一切目もくれず、動物のウンチを探しているのですけれど。
動物と人間の境界線
車山高原や霧ヶ峰高原、それに僕が住んでいる塩尻市の高ボッチ高原周辺でも、ニホンジカの被害はとても多いです。高山植物を食べてしまう被害が、毎年のように報告されています。でも、シカは高山植物が貴重かどうかなんて、考えていません。ただ、そこにおいしそうな植物があるから食べているだけです。責められません。ただ、人間と野生動物の境界線があいまいになっていくのは、決してよいことではありません。
フンが運ぶ「見えないリスク」
たとえば、山菜採りにいって、長靴の中に水がしみたとします。そんなちょっとした水たまりでも、野生動物由来の病気に感染するきっかけになることがあります。ネズミの尿に含まれるレプトスピラ菌が混じっていて、それが足の傷口から体に入る。そうすると、発熱や筋肉痛、腎臓の不調が起きることもあります。
また、市街地のビルの狭間で、鳩の乾いたフンが風で舞い、それを吸い込んだことで、クリプトコックス症という真菌の病気になることがあります。咳や発熱だけでなく、免疫力が落ちている人では、肺炎や髄膜炎のような重い症状に進むことがあります。
野生動物の糞は、見た目は小さくても、寄生虫の卵や細菌、ウイルスなどを運ぶことがあります。たとえば、キツネのフンに含まれる「エキノコックス」という寄生虫は、人が感染すると数年後に肝臓を侵すこともあると、北海道の研究チームが報告しています。
大切なのは「前提」を持つこと
こう聞くと、少し怖く感じるかもしれません。でも、過度に不安になる必要はありません。大切なのは、「見えないリスクがある」という前提を持つことです。フンや汚れた水に触れたあとは、石けんでしっかり手を洗う。生水は必ず煮沸する。野生動物が出入りしている場所には、できるだけ近づかない。そんな、ほんの少しの注意が、自分と家族を守ることにつながります。
フンは、そこに動物がいたという小さな証しです。そしてそれは同時に、自然と人との距離を教えてくれるサインでもあります。野生動物と一緒に住まないこと、距離を保つことが大切なんです。
感染予防と、フンの正しい処理・消毒方法
論文や公的機関の資料に基づき、野生動物の糞尿から感染する可能性のある病気と、その予防・対処法を解説します。
主な感染症とその経路
野生動物の糞尿に直接触れる、汚染された水や土壌に触れる、乾燥した糞の粉塵を吸い込む、といった経路で人に感染することがあります。
- エキノコックス症:キツネ等の糞に含まれる虫卵が口から入ることで感染。数年後に重篤な肝機能障害を引き起こすことがあります。
- レプトスピラ症:ネズミ等の尿で汚染された水や土壌から、皮膚や粘膜から感染。発熱や腎障害などを引き起こします。
- サルモネラ症:爬虫類や鳥類などの糞便に触れた手指から経口感染。発熱、下痢、腹痛などを引き起こします。
- トキソプラズマ症:ネコ科動物の糞に含まれる寄生虫を経口摂取することで感染。多くは無症状ですが、妊婦などは重症化することがあります。
- クリプトコックス症:ハトなど鳥類の糞の粉塵を吸入することで感染。肺炎や髄膜炎を引き起こすことがあります(特に免疫低下者)。
- オウム病:鳥の糞に含まれる菌を吸い込むことで感染。呼吸器系の症状が出ます。
- 回虫症:動物の糞に含まれる虫卵を経口摂取することで感染。発熱や腹痛などを引き起こします。
感染予防のポイント
- 野生動物やその糞尿に直接触れた場合は、必ず石けんと流水で手洗いを徹底する。
- 野外活動後や動物の糞が多い場所では、飲食を避ける。
- 野生動物を人家に近づけないよう、生ゴミやペットフードを屋外に放置しない。
最も推奨される消毒方法
公的機関や自治体の資料によると、最も重要で効果的なのは**「石けんと流水による手洗い」**をすぐに行うことです。病原体を物理的に除去できます。
追加の消毒が必要な場合
- 手洗い後にアルコール消毒液を使用するのも有効です。
- 靴や衣類、道具などに付着した場合は、アルコールスプレー、塩素系洗剤(家庭用漂白剤)、逆性石けんなどで消毒します。
注意点
- 処理時は手袋やマスクを着用し、乾燥した糞や粉じんを吸い込まないようにしましょう。
- 素手で糞尿を処理せず、目や口、傷口に触れないようにしてください。
- もし体調に異変があれば、早めに医療機関を受診してください。
関連情報:他の方法で探す・相談する
今回の情報で特定が難しかった場合や、より詳しく知りたい場合は、他の専門ガイドもあわせてご覧ください。