野生動物のフンで探す|庭や天井裏で見分ける侵入者の痕跡

見慣れないフンは、動物からの重要なサインです

庭やベランダ、天井裏で見慣れないフンを見つけると、不安になりますよね。そのフンは、家に侵入した動物の種類を特定する、最も重要な手がかりです。このページでは、実際のフンの写真を元に、その正体を見分ける方法を専門家が詳しく解説します。

野生動物のフン 写真ギャラリー:あなたの家のはどれ?

フンによる実際の被害事例

フンに関するよくあるご質問

庭やベランダに黒くて細長い糞が落ちていました。どんな動物の可能性がありますか?
糞の大きさや形、内容物、場所によって、イタチ・ハクビシン・テン・ネズミなどが考えられます。写真や特徴をもとに識別できます。
小さな黒い粒が床に落ちていました。ゴミか動物の糞か見分ける方法は?
糞は独特の臭いがあり、内容物(毛・種・昆虫片など)が混じることが多いです。ゴミは無臭で均質なことが多いです。
動物の糞を見つけましたが、放置しても問題ありませんか?
放置すると感染症や悪臭、建物の劣化の原因になるため、早めに適切な処理と消毒を行いましょう。
野生動物の糞を安全に掃除・消毒する方法は?
手袋とマスクを着用し、糞を密閉して廃棄、石けんと流水で手洗い、必要に応じてアルコールや塩素系消毒剤で清掃します。
何度も糞が見つかります。動物の侵入経路や再発防止策は?
屋根裏や壁の隙間、換気扇、床下などを点検し、金網やパテで塞ぐ、餌になる生ごみを屋外に放置しない、忌避剤を使うなどが有効です。
動物の糞で健康被害はありますか?
一部の糞には細菌や寄生虫、ウイルスが含まれ、感染症やアレルギーの原因になります。特に小児や高齢者、免疫力が低い方は注意が必要です。

専門家の現場ノートコラム

山菜採りと、ウンチ探し

長野県に住んでいると、野生動物の駆除対策の仕事をしている場面だけでなく、ごく普通の暮らしの中でも、野生動物のフンに出会うことがあります。

春になると、たとえば八ヶ岳山麓沿いの道路では、路肩に車を止めて、山菜採りをしている人をよく見かけます。春の風物詩ですね。ワラビ、おいしいですよね。僕も好きです。とはいえ、僕はその横で、山菜には一切目もくれず、動物のウンチを探しているのですけれど。

動物と人間の境界線

車山高原や霧ヶ峰高原、それに僕が住んでいる塩尻市の高ボッチ高原周辺でも、ニホンジカの被害はとても多いです。高山植物を食べてしまう被害が、毎年のように報告されています。でも、シカは高山植物が貴重かどうかなんて、考えていません。ただ、そこにおいしそうな植物があるから食べているだけです。責められません。ただ、人間と野生動物の境界線があいまいになっていくのは、決してよいことではありません。

フンが運ぶ「見えないリスク」

たとえば、山菜採りにいって、長靴の中に水がしみたとします。そんなちょっとした水たまりでも、野生動物由来の病気に感染するきっかけになることがあります。ネズミの尿に含まれるレプトスピラ菌が混じっていて、それが足の傷口から体に入る。そうすると、発熱や筋肉痛、腎臓の不調が起きることもあります。

また、市街地のビルの狭間で、鳩の乾いたフンが風で舞い、それを吸い込んだことで、クリプトコックス症という真菌の病気になることがあります。咳や発熱だけでなく、免疫力が落ちている人では、肺炎や髄膜炎のような重い症状に進むことがあります。

野生動物の糞は、見た目は小さくても、寄生虫の卵や細菌、ウイルスなどを運ぶことがあります。たとえば、キツネのフンに含まれる「エキノコックス」という寄生虫は、人が感染すると数年後に肝臓を侵すこともあると、北海道の研究チームが報告しています。

大切なのは「前提」を持つこと

こう聞くと、少し怖く感じるかもしれません。でも、過度に不安になる必要はありません。大切なのは、「見えないリスクがある」という前提を持つことです。フンや汚れた水に触れたあとは、石けんでしっかり手を洗う。生水は必ず煮沸する。野生動物が出入りしている場所には、できるだけ近づかない。そんな、ほんの少しの注意が、自分と家族を守ることにつながります。

フンは、そこに動物がいたという小さな証しです。そしてそれは同時に、自然と人との距離を教えてくれるサインでもあります。野生動物と一緒に住まないこと、距離を保つことが大切なんです。

感染予防と、フンの正しい処理・消毒方法

論文や公的機関の資料に基づき、野生動物の糞尿から感染する可能性のある病気と、その予防・対処法を解説します。

主な感染症とその経路

野生動物の糞尿に直接触れる、汚染された水や土壌に触れる、乾燥した糞の粉塵を吸い込む、といった経路で人に感染することがあります。

  • エキノコックス症:キツネ等の糞に含まれる虫卵が口から入ることで感染。数年後に重篤な肝機能障害を引き起こすことがあります。
  • レプトスピラ症:ネズミ等の尿で汚染された水や土壌から、皮膚や粘膜から感染。発熱や腎障害などを引き起こします。
  • サルモネラ症:爬虫類や鳥類などの糞便に触れた手指から経口感染。発熱、下痢、腹痛などを引き起こします。
  • トキソプラズマ症:ネコ科動物の糞に含まれる寄生虫を経口摂取することで感染。多くは無症状ですが、妊婦などは重症化することがあります。
  • クリプトコックス症:ハトなど鳥類の糞の粉塵を吸入することで感染。肺炎や髄膜炎を引き起こすことがあります(特に免疫低下者)。
  • オウム病:鳥の糞に含まれる菌を吸い込むことで感染。呼吸器系の症状が出ます。
  • 回虫症:動物の糞に含まれる虫卵を経口摂取することで感染。発熱や腹痛などを引き起こします。

感染予防のポイント

  • 野生動物やその糞尿に直接触れた場合は、必ず石けんと流水で手洗いを徹底する。
  • 野外活動後や動物の糞が多い場所では、飲食を避ける。
  • 野生動物を人家に近づけないよう、生ゴミやペットフードを屋外に放置しない。

最も推奨される消毒方法

公的機関や自治体の資料によると、最も重要で効果的なのは**「石けんと流水による手洗い」**をすぐに行うことです。病原体を物理的に除去できます。

追加の消毒が必要な場合

  • 手洗い後にアルコール消毒液を使用するのも有効です。
  • 靴や衣類、道具などに付着した場合は、アルコールスプレー、塩素系洗剤(家庭用漂白剤)、逆性石けんなどで消毒します。

注意点

  • 処理時は手袋やマスクを着用し、乾燥した糞や粉じんを吸い込まないようにしましょう。
  • 素手で糞尿を処理せず、目や口、傷口に触れないようにしてください。
  • もし体調に異変があれば、早めに医療機関を受診してください。

関連情報:他の方法で探す・相談する

今回の情報で特定が難しかった場合や、より詳しく知りたい場合は、他の専門ガイドもあわせてご覧ください。

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