長野県のコウモリ全19種一覧|生態・レッドリストから住宅被害の対策まで専門家が解説

こんにちは、かわほりプリベントの山岸淳一です。日本国内には約35種のコウモリが生息していますが、その過半数を超える19種が長野県に生息しています。

なぜ信州はこれほどコウモリの種類が多いのか。

その答えは、3000メートル級の急峻な山岳地帯から、豊かな森林、豊富な水生昆虫を育む清らかな河川、そしてそれらとモザイク状に入り組む人間の生活圏(市街地や農地)が存在する、長野県特有の自然環境にあります。

例えば、長野県の大河といえば犀川、千曲川、天竜川。この川周辺は、発生する虫が豊富なため、アブラコウモリの生息が多い地域と重なります。

長野県南部を流れる天竜川。豊富な昆虫がアブラコウモリなどの餌場となる環境。
諏訪湖近くを流れる天竜川。天竜川、犀川、千曲川など信州の河川周辺は昆虫が多く発生し、アブラコウモリにとって絶好の餌場となっています。

そして少し標高が高くなると、長野県各地には静かな森に囲まれた別荘地域があります。

そこでは森林性のコウモリたち、例えばニホンウサギコウモリ、コテングコウモリ、クビワコウモリなどが住んでいます。

夏の夜の妙高高原スキー場。森林性のコウモリが飛来する長野県の自然環境。
長野県内の夏のスキー場。夜になると森林性の多様なコウモリたちが飛び交います。

長野県に生息しているコウモリたちは、すべて冬眠をします。コウモリによって夏の生活圏と冬の冬眠場所は異なります。

この多様な自然観境が重要で、標高や植生、気候のグラデーションこそが、多くのコウモリが住む理由のひとつです。

1分まとめ

この記事でわかること

  • 長野県に生息する全19種のコウモリ一覧(レッドリスト対応)
  • 実際に信州の住宅で被害を引き起こしている「7種類」の実態
  • 冬の室内出没の原因となる、信州特有の住宅構造(通気層)のリスク
  • フンや寄生虫(ダニなど)による健康被害と現場事例
  • 行政窓口の対応範囲と、違法な業者を防ぐ専門家の選び方
  • クビワコウモリなど長野県を代表するコウモリ6選の詳しい生態

長野県に生息するコウモリは何種類か?【全19種一覧表・絶滅危惧種対応】

まず、長野県内で生息が確認されているコウモリ一覧です。
和名長野県レッドリスト環境省レッドリスト
オヒキコウモリ情報不足絶滅危惧II類
ニホンキクガシラコウモリ
コキクガシラコウモリ
ユビナガコウモリ絶滅危惧IB類
コヤマコウモリ絶滅危惧IB類
ヤマコウモリ絶滅危惧II類絶滅危惧II類
アブラコウモリ
モリアブラコウモリ情報不足絶滅危惧II類
ヒナコウモリ絶滅危惧IB類
クビワコウモリ絶滅危惧IB類絶滅危惧II類
チチブコウモリ絶滅危惧IB類地域個体群
ニホンウサギコウモリ絶滅危惧II類
テングコウモリ
コテングコウモリ絶滅危惧IB類
クロホオヒゲコウモリ絶滅危惧IB類絶滅危惧II類
ヒメホオヒゲコウモリ絶滅危惧IB類
モモジロコウモリ
カグヤコウモリ絶滅危惧IB類
ノレンコウモリ絶滅危惧IB類絶滅危惧II類

(出典:コウモリの会編『識別図鑑 日本のコウモリ』[文一総合出版,2023]、長野県版レッドリスト、環境省レッドリスト)

これほど多様なコウモリが生息する長野県ですが、すべての種が住宅に住み着くわけではありません。

では、実際に私たちの生活圏で被害を引き起こし、対策が必要となるのはどの種なのでしょうか。現場で確認されている具体的な種類について見ていきましょう。

長野県の住宅で被害・相談が多いコウモリ【実務確認済み7種】

ここまで紹介したコウモリ19種のうち、半分ほどの種類が建物など人工建造物を利用した記録があります。

コウモリは洞窟や樹洞を利用する種が多いですが、地域や環境などによっては住宅の内部へ住み着くことがあります。

人工建造物の利用が確認されている7種

私の現場において、アブラコウモリ、ヒナコウモリ、キクガシラコウモリ、ヒメホオヒゲコウモリ、ウサギコウモリ、ヤマコウモリ、クビワコウモリの7種が、長野県内で人工建造物を利用していることを、実際に確認しています。

他にも人工建造物を利用するコウモリはいることが論文などでわかっていますので、長野県内でも見つかるかもしれません。

長野県立科町の別荘の天井裏に住み着いたニホンウサギコウモリの群れ。木材にぶら下がって休む様子。
天井裏の木材にぶら下がるニホンウサギコウモリの群れ(長野県立科町の別荘にて撮影)。特徴的な長い耳を持つ森林性のコウモリが、別荘などの人工建造物をねぐらとして利用している実例です。
長野県立科町の別荘の天井裏に大量に堆積したウサギコウモリの糞。断熱材が尿で傷んでいる様子。
長野県立科町にある別荘の天井裏の様子。ウサギコウモリのねぐら直下には大量の糞が堆積してしまっています

【現場実例】上記2枚の写真は、ニホンウサギコウモリが別荘の天井裏に住み着いた長野県立科町の実際の現場です。この糞の堆積している糞を見て、「この糞の下で生活するのは無理だ」とおっしゃっていました。難しい問題です。

ネット業者や素人業者が駆除を行うリスク

インターネットでコウモリ駆除専門を謳う業者に頼んだら、県外の便利屋が来たなんてことはよく聞きます。気を付けてください。


「ネット業者に依頼してコウモリ駆除をしてもらったが、実は絶滅危惧種で、駆除方法も違法だった」とならないようにしましょう。

自分の身は、自分で守らなければいけません。自分の目で業者をよく確かめてから依頼してください。

コウモリの種が変われば、対策方法も変わる

コウモリの種類が変われば、侵入する隙間のサイズも、活動のピークも、冬眠の深さもすべて異なります。希少種を法的に守りつつ、住居の平穏を取り戻すためには、単なる「駆除業者」ではなく、19種を見分ける「同定能力」を持った専門家へ依頼をしましょう。

信州特有の住宅リスク:冬にコウモリが室内へ出る理由

コウモリがうっかり室内へ出てきてしまう理由

信州の冬、屋根裏で冬眠しているはずのコウモリが「部屋の中に出てきた」という相談が後を絶ちません。これは、長野県が誇る高断熱・高気密住宅と、冬場の強力な暖房がもたらす特殊な現象です。

暖められた壁内や屋根裏で、コウモリが「春が来た」と勘違いして目覚め、カメムシと同じようにわずかな隙間から居住スペースへ迷い込んでしまうのです。冬の室内出没は、その家がコウモリにとって「快適すぎる越冬地」になっている証拠でもあります。

基本的に、室内へコウモリが現れた場合は、ほぼ建物内に住み着いていることが理由です。たまたま空いていて窓から入るなんてことは、滅多にありません。

住宅建築の視点:閉じていい隙間、いけない隙間

コウモリ対策において、私が最も神経を使うのが「建物の通気」です。長野のような寒冷・多雪地域の住宅は、結露による構造材の腐食を防ぐため、わざと空気を通す「通気層」を設計しています。

長野県の住宅に見られる外壁と軒天の間の通気口。コウモリの侵入経路となりやすい。
信州特有の住宅リスク。外壁と軒天の間にある「通気層」からコウモリが侵入しますが、建物の呼吸を維持するため、空気は通しつつ侵入を防ぐ専門的な処置が不可欠です。


コウモリはこの隙間を巧みに利用しますが、知識のないままにすべてを密閉してしまえば、家は呼吸ができなくなり、数年で内部から腐朽が始まります。

「コウモリは完全に防ぐが、建物の寿命は縮めない」。これを徹底する必要があるのが長野の住宅です。

コウモリが夜になると外壁にぶら下がって糞をする現象について

長野県内の住宅。濃いグレーの外壁に白く垂れ下がった、アブラコウモリの尿による結晶汚れ。
長野県内の現場にて撮影。黒、濃紺、グレーの外壁では、アブラコウモリの尿成分が「白い跡」として特に目立ちます。水分が蒸発し、残された成分が外壁に雨だれのようにこびりついている状態です。

夜間、コウモリが外壁や軒下に一時的にぶら下がって休息する場所を「ナイトルースト(休憩所)」と呼び、その真下には大量の糞が落ちます。

また、外壁に付着する白いシミは鳥のフンとよく間違われますが、実はコウモリの尿(おしっこ)による汚れです。

なぜコウモリの尿で外壁が白くなるのか、詳しい解説記事を書いていますのでこちらもどうぞ。

関連記事|コウモリの尿で外壁塗装が白く汚れる原因|駆除対策の専門家が語る科学的メカニズム

衛生リスクと寄生虫被害:長野県内の事例報告

コウモリのフンや尿による公衆衛生リスクについて

日本(長野県を含む)では、コウモリのフンや尿が原因と断定された重い感染症の大きな流行は、現在のところ確認されていません。​


ただし海外では、フンに含まれるカビ(ヒストプラズマなど)を吸い込んで肺の病気になった例があり、日本でもフンが大量にたまった場所で粉じんを吸い込めば、理論上リスクがゼロとは言えません。


海外ではコウモリのフンによる呼吸器系アレルギー疾患の症例があります。乳幼児・高齢者・基礎疾患や免疫低下のある人、強いアレルギー体質や喘息のある人は、注意が必要です。

【現場事例】
安曇野市の木造住宅の天井裏で確認されたアブラコウモリの堆積糞です。断熱材上に長年蓄積し、乾燥して粉末化していました。

このような状態では、作業時に大量の微細ダストが舞い上がります。防護装備なしでの清掃は危険であり、専門的な集じん機と防護装備が必要となります。

天井裏に大量に蓄積したコウモリの糞。断熱材をはがした後の様子で、床一面が黒く覆われている。長野県安曇野市で撮影。
コウモリが住み着いていた天井裏の様子。断熱材をはがすと、床一面に大量のコウモリの糞が堆積していました(長野県安曇野市にて撮影)。

コウモリの外部寄生虫について

長野県内では、コウモリに付着するコウモリマルヒメダニやコウモリトコジラミによる人間への吸血被害が明確に確認されています。


また、特にコウモリマルヒメダニの長野県内での人間への吸血被害事例は学会でも報告されており、私自身も現場でその被害を幾度も目撃してきました。コウモリが自宅にいて、ダニや虫刺されがひどい場合は、一度皮膚科などへ相談することをおすすめします。

【長野県内の実例】

割り箸の先端に乗っているコウモリマルヒメダニ(Carios vespertilionis)を真上から撮影したクローズアップ。暗褐色で楕円形の扁平な体と、背面の細かい凹凸模様がはっきりと写っている。長野県安曇野市での採取事例。
長野県安曇野市の住宅で採取されたコウモリマルヒメダニ(学名:Carios vespertilionis)の背面写真。割り箸と比較することで、その微小なサイズ感と、特徴的な背中の網目状模様が鮮明に確認できる貴重な記録。


【現場実例】これは安曇野市の住宅で、寝室換気扇にアブラコウモリが生息していた現場で撮影したコウモリマルヒメダニです。

コウモリのねぐら周辺や天井裏から居住空間へ移動することがあります。原因不明の刺咬被害が続く場合、コウモリの存在を疑う必要があります。


コウモリの寄生虫・ダニ・ノミなどの詳しい生態や対処法については、私が書いた別の解説記事をご覧ください。


関連記事|コウモリ寄生虫・ダニ・ノミ・トコジラミの解説ページ

長野県内のコウモリの行政相談窓口について

現在、私が知る限り、長野県内に「コウモリ相談専門部署」は存在しません。


相談窓口候補としては、各地域の合同庁舎にある地域振興局林務課(有害鳥獣担当)や、各市役所の野生動物担当課が候補となります。

例えば、松本市役所ウェブサイトを見ると、コウモリの相談先として長野県松本地域振興局の林務課を案内しています。ですので、行政に相談したい方は、合同庁舎内の地域振興局、又は市役所へご相談ください。


ただ、行政の役割は、コウモリの駆除や防除は含まれません。行政の役割は、あくまで「法的な助言や許可」であり、物理的な解決ではありません。法律(鳥獣保護管理法)を遵守しつつ、建築と生態の両面から解決できる専門家への相談が、最短の解決策となります。

最後に、長野県を象徴するコウモリたちの驚くべき生態について、私が現場で撮影した写真とともに詳しく解説します。

かわほりプリベントが、あなたのコウモリ被害、解決します。

長野県のコウモリ6選:生態と特徴を専門家が解説

長野県を代表するコウモリの希少種と固有種の生態

長野県の自然を語る上で欠かせないのが、世界的にも極めて希少な日本固有種「クビワコウモリ」の存在です。

このコウモリは、長野県の乗鞍高原などのごく限られた地域でしか、まとまった出産・哺育コロニー(集団)が確認されていません。彼らは自然の樹洞だけでなく、家屋の屋根裏や壁の隙間を巧みに利用して子育てを行います。

初夏に長野県松本市の乗鞍高原にやってきて、出産子育てをして、秋になると姿を消します。いったい冬はどこにいるのか、未だわかっておらず、謎に包まれています。

また、過去には長野県特産種として「シナノホオヒゲコウモリ」という名で記載された種が存在したこと(現在は分子系統学的にヒメホオヒゲコウモリと同種とされています)や、幻の「コヤマコウモリ」の記録があることなど、まさに「コウモリの宝庫」です。

今回はその中から、生活圏でよく見かける身近な種から、長野県を代表するような希少種まで、私が実際に長野県内で撮影した写真とともに「長野県のコウモリ6選」を解説します。

① アブラコウモリ(イエコウモリ)

市街地で夕暮れ時によく見かける、最も人間生活に密着したコウモリです。長野県内の平野部ならどこでも見られます。

白い軍手の上で丸まり、密度が高くふっくらとした茶褐色の冬毛をまとったアブラコウモリの接写写真。
長野県伊那市にて撮影された、冬毛に覆われたアブラコウモリ(2025年11月)
  • 学名Pipistrellus abramus
  • 長野県レッドリスト:-(非該当)
  • サイズ:頭胴長 37〜60 mm、前腕長 30〜37 mm
  • 体重:5〜11 g
  • 種の特徴と生態
    • いわゆる「人間の生活に近いコウモリ」で、家屋や人工建造物のわずかな隙間をねぐらにします。自然の洞窟などには住みません。
    • 「アブラ」という名前の由来は、逆光で飛ぶ姿を見たとき、飛膜(翼)が茶色く半透明で「油紙」のように見えるからだと言われています。
    • 一晩に大量の蚊などの小型昆虫を食べる益獣ですが、家に住み着いてフン害を起こす代表的な種でもあります。

自宅にコウモリが住み着いているという場合はこのアブラコウモリの可能性が高いです。アブラコウモリの詳しい生態については記事を書いていますので、下記リンクからお読みください。

関連記事|アブラコウモリ(イエコウモリ)の生態|家に来る理由・行動パターン・基本データ

② クビワコウモリ

長野県のコウモリを語る上で絶対に外せない、世界的にも希少な日本固有種です。

樹皮の上で静止するクビワコウモリのクローズアップ。種の特徴である首回りの琥珀色の毛と、厚みのある吻部(鼻先)、黒く光る目が鮮明に写っている。
クビワコウモリ(学名:Eptesicus japonensis)。乗鞍高原に世界的にも貴重な繁殖コロニーを持つ日本固有種。環境省および長野県レッドリストで絶滅危惧IB類(EN)に指定されている。長野県松本市で撮影。
  • 学名Eptesicus japonensis
  • 長野県レッドリスト:● (EN:絶滅危惧IB類)
  • サイズ:頭胴長 54〜68 mm、前腕長 38〜42 mm
  • 体重:8〜13 g
  • 種の特徴と生態
    • 首の後ろから前胸部にかけて琥珀色(コハク色)の毛が生えており、角度によって「首輪」のように見えるのが特徴です。
    • 世界でも長野県の「乗鞍高原」などでしかまとまった出産・哺育コロニー(集団)が確認されていません。彼らを保護するため、専用の「バットハウス(人工ねぐら)」が建てられ、実際に利用されています。

③ ニホンウサギコウモリ

別荘地や山間部の家屋などでよく見つかる、非常に特徴的な見た目をしたコウモリです。私が大好きなコウモリです。

体長に匹敵するほどの巨大な耳を垂直に立てたニホンウサギコウモリの正面図。白っぽい腹部の毛と、大きな耳の複雑な脈構造が見て取れる。
ニホンウサギコウモリ(学名:Plecotus auritus sacrimontis)。圧倒的な長さの耳が最大の特徴。冬眠時にはこの耳を翼の下に折りたたんで収納する。長野県の別荘地や古い家屋でも見られる。長野県松本市で撮影。
  • 学名Plecotus auritus sacrimontis
  • 長野県レッドリスト:● (VU:絶滅危惧II類)
  • サイズ:頭胴長 42〜63 mm、前腕長 37〜44 mm
  • 体重:5〜11 g
  • 種の特徴と生態
    • 名前の通り、体に対して圧倒的に「長い耳(ウサギのような耳)」を持っています。
    • 休む時や冬眠する時は、この長い耳を扇子のように折りたたんで、前腕と体の間にピタッと収納するという、他のコウモリにはできない特技を持っています。
    • 本来は樹洞や洞穴をねぐらとしますが、家屋や地下室などの建造物も好んで利用するため、長野県の自然豊かな別荘地などでも遭遇率の高い種です。

④ コテングコウモリ

愛好家の間で絶大な人気を誇る、可愛らしい顔と「驚異の冬眠術」を持つコウモリです。

ふかふかとした毛に覆われ、丸まって休むコテングコウモリ。名前の由来である管状に突き出した特徴的な鼻先(外鼻孔)が正面から捉えられている。
コテングコウモリ(学名:Murina ussuriensis silvatica)。管状の鼻を持つユニークな外見。積雪地帯の長野県では、雪の中に潜り込んで冬眠するという極めて珍しい生態が確認されている。長野県松本市で撮影。
  • 学名Murina ussuriensis silvatica
  • 長野県レッドリスト:● (EN:絶滅危惧IB類)
  • サイズ:頭胴長 38〜50 mm、前腕長 28〜36 mm
  • 体重:4〜9 g
  • 種の特徴と生態
    • 鼻の先が管状になって左右に突き出しており、これが「天狗(テング)」の鼻のように見えるのが名前の由来です。
    • 普段は丸まった枯れ葉の中などをねぐらにして眠るというユニークな生態をしています。
    • さらに驚くべきは冬の過ごし方で、長野県のような積雪地帯ではなんと「雪の中(雪中)」に潜り込んで冬眠することが確認されています。

⑤ ヒナコウモリ

巨大な集団を作るため、時に人間の生活と激しく衝突(騒音や悪臭)してしまう中型のコウモリです。

ヒナコウモリの横顔。背中の毛に銀色の差し毛が混じる「霜降り状」の美しい被毛と、短く幅広な耳、頑丈そうな顎のラインが特徴的。
ヒナコウモリ(学名:Vespertilio superans)。銀白色が混じる独特の毛並みを持つ。高架橋や家屋に巨大なコロニーを作るため、人間生活との軋轢が生じやすい側面もある。
  • 学名Vespertilio superans
  • 長野県レッドリスト:● (EN:絶滅危惧IB類)
  • サイズ:頭胴長 59〜80 mm、前腕長 43〜53 mm(アブラコウモリより二回りほど大きい)
  • 種の特徴と生態
    • 背中の毛は黒褐色に銀色の毛が混じる美しい霜降り状をしています。群れることが非常に大好きなコウモリで、家屋の屋根裏や、近年では新幹線の高架橋のコンクリートの隙間などに、数百頭という大規模な出産・哺育コロニーを形成します。
    • これだけ巨大な集団が建物に住み着くため、鳴き声(騒音)や大量のフン尿による悪臭・ダニの発生などで、人間との間に軋轢が生じやすい種でもあります。
    • 個人的には、銀色が混じる体毛とその黒くはっきりした顔立ちから、最も美しいと感じるコウモリです。ちなみに寄生虫の宝庫です。

⑥ ヒメホオヒゲコウモリ

かつて長野県特産種「シナノホオヒゲコウモリ」として記載された歴史を持ち、北アルプスなどの山岳地帯を象徴する小型のコウモリです。

鋭い歯を見せて口を開けるヒメホオヒゲコウモリの横顔。茶褐色の体毛と、顔に対して比較的小さく尖った耳、細かな感覚毛が捉えられている。
ヒメホオヒゲコウモリ(学名:Myotis ikonnikovi)。かつて長野県特産種「シナノホオヒゲコウモリ」として記載された歴史を持つ。北アルプスなどの亜高山帯に生息する、体重わずか数グラムの極小種。長野県松本市で撮影。
  • 学名Myotis ikonnikovi
  • 長野県レッドリスト:● (EN:絶滅危惧IB類)
  • サイズ:頭胴長 39〜55 mm、前腕長 31〜36 mm
  • 体重:4〜8 g
  • 種の特徴と生態
    • 体重わずか4〜8gという非常に小さなコウモリで、本州では主に山地から亜高山帯の自然林に生息し、立枯木や生木の樹皮下、幹の割れ目などをねぐらにして暮らしています。
    • 実は過去に長野県で発見された個体が「シナノホオヒゲコウモリ(Myotis hosonoi)」という長野県特産の独立種として記載された歴史があります。現在ではDNA解析などの進展により、これらはすべてヒメホオヒゲコウモリと同種として統合されていますが、長野県のコウモリ分類学の歴史を語る上では絶対に欠かせない存在です。
    • 私自身も北アルプスの調査に入ると非常によく遭遇する、長野の豊かな山岳環境に深く根ざしたコウモリです。

長野県のコウモリFAQ

Q
自分でコウモリを追い出したり、隙間を閉じたりしてもいいですか?
A

コウモリは「鳥獣保護管理法」により保護されており、許可なく捕獲や殺傷することは違法です。ご自身で追い出すこと自体は可能ですが、問題はその後です。
専門知識がないまま建物の隙間を閉じてしまうと、長野県のような寒冷地の住宅では「通気層」を潰すことになり、結露によって数年で家が腐朽する原因になります。また、希少種を誤って傷つけるリスクもあるため、自己判断での処置はおすすめしません。

Q
冬なのに家の中にコウモリが出ました。どう対応すればいいですか?
A

信州の高断熱住宅では、暖房の熱で壁内や屋根裏が暖まり、冬眠中のコウモリが「春が来た」と勘違いして室内へ迷い込むことがよくあります。
見つけた場合は、素手で絶対に触らず、窓を開けて自然に出ていくのを待つか、虫取り網などで優しく捕獲して外へ放してください。冬に室内に出たということは、すでに家が「越冬地」として利用されている証拠ですので、早急に専門家へ調査を依頼してください。

Q
ベランダや天井裏のコウモリのフンは、自分で掃除しても安全ですか?
A

少量であればマスクと手袋をして片付けることは可能ですが、天井裏などに大量に堆積している場合は危険です。
乾燥したフンを吸い込むと、深刻な感染症やアレルギー疾患を引き起こすリスクがあります。また、フンの周辺には吸血性のコウモリマルヒメダニやトコジラミが潜んでいる可能性も高いです。防護装備と専用の集じん機がない状態での清掃は控えてください。

Q
市役所や保健所に相談すれば、無料で駆除に来てくれますか?
A

行政(市役所や地域振興局)は、コウモリの駆除や防除といった物理的な作業は一切行いません。あくまで「鳥獣保護管理法」に基づく法的な助言や、捕獲許可の手続き窓口としての役割のみです。
「どうすればいいか」という相談には乗ってくれますが、実際の解決はご自身で専門業者を手配し、費用を負担して行う必要があります。

Q
長野県内でコウモリ対策に使える助成金や補助金はありますか?
A

私自身、長野県内で長年この実務に携わっていますが、国や県、市町村からコウモリの防除対策に対して助成金や補助金が出たという事例は一度も聞いたことがありません。行政からの金銭的な支援はなく、対策費用は全額自己負担になるのが基本です。

参考文献・外部リンク

この記事の執筆者・監修者

かわほりプリベント代表 山岸淳一

山岸 淳一 (Junichi Yamagishi)

長野県を拠点に活動する「野生動物の仕分け屋」。かわほりプリベント代表。動物と人間との曖昧になった境界線を整えることを使命とし、重要文化財から一般宅まで実績多数。SBC信越放送「もっとまつもと!」にレギュラー出演中。三度の飯よりコウモリが好き。

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営業地域

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