野生動物のフンで探す|家の庭、ベランダ、外壁、天井裏の痕跡で見分け方

庭や天井裏で見慣れないフンを見つけたら、このページを開いてください。それは、正体不明の侵入者を暴くための、何より確実な「現場に残された証拠」です。

「ネットで調べても、似たような黒いフンの写真ばかりで、結局どれだかわからない…」そんな経験はありませんか? このページは、そんなあなたのために日本で一番わかりやすい、住宅の近くにある野生動物のうんち解説ページにしたいと思い、作りました。

ここに掲載している写真はすべて、私自身が長野県内、それも皆さんの暮らしに近い住宅地やその周辺で実際に撮影した本物です。図鑑に載っているような遠い山の話ではありません。あなたの家のすぐ隣で起きている、現実の記録です。

そして、このフン図鑑はまだ完成ではありません。新たな動物のフンを発見・撮影するたびに、随時情報を追加・更新していく、いわば「進化し続けるフン図鑑」です。さあ、一緒に犯人を突き止めましょう。

 

ハクビシンのフン

コンクリート床の上に排泄されたハクビシンの糞。果実の種が多く含まれている様子(長野県塩尻市、2021年撮影)
長野県塩尻市で撮影。果実を多く食べたことがわかる大量の種子が含まれており、屋内への侵入や衛生リスクの判断材料となる。
  • 外見・サイズ太さ約1.5cm、長さ5~15cmほどの円筒~紡錘形。赤紫色から黒褐色まで、内容物によって色調が変化。やや湿り気がある。
  • 見つかる場所橋の欄干、樹上、屋根裏、高所、庭の隅など目立つ場所。同じ場所に繰り返し「ためフン」をする習性がある。
  • 臭いフン自体は弱いが、尿が混じると強いアンモニア臭がする。
  • 食性雑食性。果実(クワ、トウモロコシ等)、昆虫、小動物など。
  • 内容物の視認性果実の種子や皮、昆虫の破片、小動物の骨などが明瞭に混ざる。
  • 衛生・生態的リスクサルモネラ菌、レプトスピラ菌など病原体の媒介リスク。
  • 他の動物との見分け方高所やためフンの場所にあり、タヌキやテンより大きく細長い。内容物が多様。
  • 備考フンの内容物や色は、季節や地域によって大きく変わります。ためフンは縄張りの目印として使われ、都市部では人間の食べ物など人工的なものが混じることも。

専門家の解説
ハクビシンのフンで最も特徴的なのは、様々な種類の果実の種子が大量に含まれていることです。これは、彼らが甘いものを好んで食べる証拠。屋根裏などでこのようなフンを見つけたら、ハクビシンが頻繁に出入りしている可能性が高いでしょう。また、同じ場所に何度も排泄する「ためフン」の習性も、侵入の長期化を示唆する重要なサインです。放置すると、悪臭や衛生問題だけでなく、建材の劣化にも繋がりますので、早めの対策が必要です。

ネズミのフン

住宅床下に散乱する白い断熱材と混ざったネズミの糞(長野県諏訪市、2024年撮影)
長野県諏訪市の住宅床下で撮影。小型哺乳類の活動痕として代表的で、構造材や保温材の被害が進行している兆候といえる。
  • 外見・サイズクマネズミ:6~10mmの細長い楕円形、ドブネズミ:15~20mmの太い楕円形、ハツカネズミ:4~7mmの米粒状。茶色から黒褐色で硬い。
  • 見つかる場所家屋内の隅、壁際、天井裏、床下、押入れ、配管周辺、食品の周辺など、移動経路上に大量に散在していることが多い。
  • 臭いアンモニア臭が強い。
  • 食性雑食性。穀物、種子、昆虫、食品の残飯など。
  • 内容物の視認性肉眼では判別しにくいが、穀物や種子の小さな破片、昆虫の断片、ネズミ自身の毛などが混じっている場合がある。
  • 衛生・生態的リスクレプトスピラ症、サルモネラ症など様々な感染症のリスクがある。
  • 他の動物との見分け方小さく硬い粒状で、コウモリのフンよりも硬く崩れにくい。広範囲に大量に散らばっているのが特徴。
  • 備考ネズミの種類によってフンをする場所に若干の違いがある。フンや尿は縄張りや移動経路の目印として利用される。乾燥したフンや尿の粉じんを吸い込むことも感染症のリスクとなる。

専門家の解説
ネズミのフンは、その種類によって大きさに違いはありますが、共通して小さく、硬い粒状であるのが特徴です。一箇所にまとまって排泄するというよりは、移動しながらあちこちに排泄するため、発見場所が広範囲に及ぶことが多いです。もし食品庫や台所の近くでこのようなフンを見つけたら、食料が狙われている可能性があり、早急な対策が必要です。また、ネズミは様々な病原菌を持っているため、フンを見つけたら直接触れないように注意し、適切に清掃・消毒を行いましょう。

イタチのフン

住宅天井裏に残されたイタチの糞。先端が細く曲がり、毛や骨片が含まれている様子(長野県松本市、2024年撮影)
長野県松本市の住宅天井裏で撮影。先端が細く曲がり、毛や骨片が含まれるのが特徴。肉食傾向が強く反映される。
  • 外見・サイズ長さ3~8cm、直径6mm~1cmほどの細長い円筒形。黒から暗褐色で、やや湿り気がある。
  • 見つかる場所川岸、石の上、倒木の上、林道、橋の欄干など、目立つ場所に排泄されることが多い。屋根裏に「ためフン」をすることもある。
  • 臭いイタチ科特有の、鼻につく強い刺激臭がある(肛門腺からの分泌液に由来)。
  • 食性主に動物食(哺乳類、鳥類、昆虫)だが、雑食の傾向もある。
  • 内容物の視認性動物の毛、小さな骨、鳥の羽、昆虫の外骨格などがはっきりと確認できることが多い。
  • 衛生・生態的リスクサルモネラ菌や寄生虫を持っている可能性がある。
  • 他の動物との見分け方強い刺激臭と、細長く湿った形状が最大の特徴。テンのフンよりも細長い傾向がある。
  • 備考イタチは縄張りを示すため、目立つ場所にフンをします。これを「サインポスト」と呼びます。都市部では昆虫や果実を食べることもあり、フンの内容物は変化します。

専門家の解説
イタチのフンを見分ける最も簡単な方法は「臭い」です。他の動物のフンとは明らかに違う、強烈な獣臭がします。もし天井裏から物音がし、このような細長く臭いフンが見つかったら、イタチが侵入している可能性が高いです。イタチはネズミを捕食するために家屋に侵入することもあるため、ネズミの被害がある家は特に注意が必要です。

コウモリのフン(アブラコウモリ)

ベランダの床面に多数散らばったアブラコウモリの糞(長野県伊那市、2020年撮影)
長野県伊那市の住宅2階ベランダで撮影。乾燥して崩れやすい状態で多数確認され、軒下や換気口付近でのナイトルースト(夜間の休息)が推察される。
  • 外見・サイズ長さ5~10mm、幅2~3mmの黒~茶色の粒状・円筒形。乾燥するとパサパサで、指でつまむと簡単に崩れる。
  • 見つかる場所屋根裏、天井裏、換気口、エアコンの室外機周辺、ベランダ、軒下、外壁の隙間など。一箇所に大量に堆積していることが多い。
  • 臭い少量ではほとんど臭わないが、大量に堆積すると強いアンモニア臭やドブのような臭い、酸っぱい臭いがする。
  • 食性完全な昆虫食。夜間に飛んでいるハエ、蚊、カメムシなどを捕食する。
  • 内容物の視認性中身は昆虫の翅(はね)や脚、複眼などの外骨格片がほとんど。キラキラして見えることがある。
  • 衛生・生態的リスク乾燥したフンの粉じんを吸い込むことによるヒストプラズマ症など、呼吸器系の感染症リスクがある。
  • 他の動物との見分け方ネズミのフンと似ているが、乾燥して非常に崩れやすい点で区別できる。ヤモリのフンと違い、白い尿酸は付着していない。
  • 備考アブラコウモリは集団で生活するため、一箇所に大量のフンをします。この「堆積」が、コウモリの存在を示す最も分かりやすいサインです。

専門家の解説
コウモリのフンとネズミのフンで迷ったら、まず「崩れるかどうか」を試してみてください。使い捨ての手袋などをして軽くつまんだ時に、ホロホロと簡単に崩れるならコウモリのフンです。彼らは昆虫しか食べないので、フンも昆虫の硬い部分でできていて、中身がスカスカなのです。ベランダや窓際、換気口の真下に黒い粒が集中して落ちていたら、その真上にコウモリのねぐらがある可能性が非常に高いです。清掃の際は、乾燥したフンの粉を吸い込まないよう、必ずマスクを着用してください。

テンのフン

建物内の木材床面に落ちていたテンの糞。赤褐色で果実の種が多く含まれている(長野県松本市、2025年撮影)
長野県松本市の建物内部で撮影。果実を多く食べた痕跡が見られ、赤褐色のペースト状に種子が混ざる特徴的な形状をしている。
  • 外見・サイズ長さ約10cm、太さ1.5cmほどの、やや太く短い円筒~紡錘形。黒褐色~暗褐色で湿り気がある。
  • 見つかる場所倒木や岩の上、登山道、林道、橋の欄干、切り株など、目立つ場所に排泄する習性がある(サインポスト)。
  • 臭いイタチ科特有の刺激臭があるが、イタチほど強くはない。
  • 食性雑食性。果実、昆虫、小型哺乳類など、季節によって食べるものが変わる。
  • 内容物の視認性果物の種子、昆虫の外骨格、小動物の毛や骨などがはっきりと確認できる。
  • 衛生・生態的リスク寄生虫やサルモネラ菌を持っている可能性がある。
  • 他の動物との見分け方イタチのフンよりやや太く短く、臭いも少しマイルド。ハクビシンのフンと似るが、テンのフンの方が動物の毛や骨が混じる割合が高い傾向がある。
  • 備考フンの内容は季節や生息地の標高によって大きく変化します。特に秋にはヤマブドウやサルナシなどの果実をよく食べるため、種だらけのフンになります。

専門家の解説
テンのフンは、雑食性の動物の典型で、季節ごとに中身がガラッと変わるのが面白い点です。夏は昆虫やネズミ、秋は木の実など、その時に食べたものが素直に反映されます。イタチと同じく目立つ場所にフンをして縄張りを主張しますが、フンの太さや臭いの強さで区別できることが多いです。もし屋根裏などで見つかった場合、イタチと同様に断熱材を荒らしたり、騒音の原因になったりします。

シカのフン(ニホンジカ)

手袋をした手のひらに乗せた複数のシカの糞。丸く黒く、乾燥したペレット状(長野県塩尻市、2019年撮影)
長野県塩尻市で撮影。典型的な球状のペレット型で、乾燥し硬くなっています。周囲の環境情報と合わせ、出没の状況を判断します。
  • 外見・サイズ直径1~1.5cmほどの球状~紡錘形の小粒。「黒豆」とよく表現される。黒から暗褐色で、乾燥すると硬くなる。
  • 見つかる場所草地、林床、登山道沿い、伐採地、畑の周辺など、採食場所や移動経路上に点々と散らばっている。
  • 臭い新鮮なものは少し草の臭いがするが、乾燥するとほとんど無臭。
  • 食性完全な草食性。季節によって草や木の葉、種子などを食べる。
  • 内容物の視認性細かくすり潰された植物の繊維が主成分。
  • 衛生・生態的リスクフン自体からの直接的な感染症リスクは低いが、シカはマダニを運ぶため、フンがある場所=シカの活動エリアとして注意が必要。
  • 他の動物との見分け方ウサギやカモシカのフンと似ているが、ウサギより大きく、カモシカより一粒一粒がはっきりしていることが多い。一度に多数が散らばって落ちているのが特徴。
  • 備考フンの大きさや硬さは、食べたものや季節、年齢によって変化します。シカのフンは、森の栄養循環において重要な役割も担っています。

専門家の解説
シカのフンは、長野県の山間部やその周辺では非常によく見かけるものです。家屋に侵入する心配はまずありませんが、庭や畑のすぐそばで頻繁に見かける場合は注意が必要です。これは、シカがあなたの土地をエサ場や通り道として認識している証拠であり、大切に育てている庭木や家庭菜園、農作物が食害に遭う前触れかもしれません。フンを見つけたら、シカの活動が活発になっているサインと捉えましょう。

イノシシのフン

草地の上に排泄されたイノシシの糞。繊維質を多く含み、形状は不定形(長野県立科町、2025年撮影)
長野県立科町の草地で撮影。食べた植物の繊維が多く含まれており、排泄直後と見られる柔らかい状態で不定形。
  • 外見・サイズ直径3~4cm、長さ約10cmほどの大きな円筒~紡錘形のかたまり。食べたものによって色や形は大きく変わる。
  • 見つかる場所畑、田んぼ、林縁、山道など。地面を掘り返した跡(ヌタ場)や、木に泥をこすりつけた跡の近くで見つかることが多い。
  • 臭い新しいフンは、強い動物臭と酸っぱい臭いが混じっている。乾燥すると弱まる。
  • 食性雑食性。植物の根や茎が中心だが、夏は昆虫、冬はドングリやタケノコなど、季節で変化する。
  • 内容物の視認性未消化のタケノコ、ドングリ、草の繊維、種子などがはっきりと確認できる。
  • 衛生・生態的リスクサルモネラ菌やE型肝炎ウイルス、寄生虫などを持っている可能性があり、注意が必要。
  • 他の動物との見分け方ひとかたまりが大きく、棒状で量が多いのが特徴。地面が掘り返された跡の周辺で見つかれば、イノシシの可能性が極めて高い。
  • 備考イノシシのフンの内容物は、彼らの行動範囲や食性を知るための重要な手がかり。農地ではビニール片などの人工物が混じることもある。

専門家の解説
イノシシのフンは、その大きさと量で他の動物と簡単に見分けがつきます。そして、フン以上に分かりやすいサインが、ミミズなどを探して鼻で地面を掘り返した跡です。もし庭や畑の近くでフンと掘り返し跡の両方を見つけたら、それはイノシシが頻繁に来ている証拠です。農作物への被害が深刻になる前に、電気柵を設置するなどの対策を検討する必要があります。

ヤモリのフン

外壁に付着したヤモリの糞。先端に白い尿酸塩がついているのが特徴(長野県池田町、2025年撮影)
長野県池田町の住宅外壁で撮影。黒いフン部分と白い尿酸塩がセットになっており、コウモリの糞と間違えやすい。
  • 外見・サイズ長さ5~10mm、幅2~4mmほどの小さな黒い棒状。フンの端に、白く固まった尿酸塩が付いているのが最大の特徴。
  • 見つかる場所壁面、窓枠、網戸、ベランダ、玄関、軒下など。特に窓ガラスや壁などの垂直な面でよく見つかる。
  • 臭いほとんどないが、たくさん溜まったり湿気たりするとカビ臭くなることがある。
  • 食性昆虫食性。夜間に家の明かりに集まるコオロギ、カメムシ、蛾などを捕食する。
  • 内容物の視認性昆虫の外骨格片が含まれる。白い尿酸塩がはっきりと確認できる。
  • 衛生・生態的リスク爬虫類なのでサルモネラ菌を持っている可能性がある。フンに触れたら手洗いを徹底する。
  • 他の動物との見分け方フンとセットで付着している「白い尿酸塩」の有無で見分ける。コウモリのフンにはこれがない。
  • 備考ヤモリは同じ場所に繰り返しフンをする傾向があります。フンがあるということは、その近くにヤモリが潜んでいる証拠です。

専門家の解説
ヤモリは漢字で書くと「家守」となり、家の害虫を食べてくれる益獣として知られています。彼らのフンを見分けるポイントは、とにかく「白いおまけが付いているか」どうかです。これはおしっこの成分(尿酸)で、爬虫類特有のものです。コウモリのフンと間違われることが多いですが、この白い点があればヤモリで確定です。壁や窓にポツポツと付いていることが多く、もし見つけても、ヤモリ自身は家に悪影響を与えることはほとんどないので、温かく見守ってあげてください。

カエルのフン(ニホンアマガエル)

窓ガラス周辺に付着したカエルの糞。形状はコウモリの糞と似る(長野県池田町、2025年撮影)
長野県池田町で撮影。形状はコウモリの糞と酷似するが、指で触れるとコウモリの糞よりスカスカしている。崩れ方や重量感から判別可能。
  • 外見・サイズ長さ10~15mm、直径3~5mmほどの短い円柱状。暗褐色から黒色で、水分を多く含み柔らかく崩れやすい。
  • 見つかる場所ベランダ、窓際、網戸、照明の近く、草地、湿地など、住宅周辺の湿った場所で見つかる。
  • 臭いほとんどないが、溜まると悪臭やカビ臭の原因になることがある。
  • 食性昆虫食性。夜間にコオロギ、ユスリカ、蛾、クモなどを捕食する。
  • 内容物の視認性昆虫の硬い殻や繊維が主成分。ヤモリと違い、尿酸はフンとは別に排泄される。
  • 衛生・生態的リスクサルモネラ菌を持っている可能性があるため、フンに触れたら必ず手洗いをする。
  • 他の動物との見分け方ヤモリのフンのような白い尿酸塩が付着しておらず、全体が黒っぽい。コウモリのフンよりも水分が多く、少し粘り気がある場合がある。
  • 備考カエルは灯りに集まる虫を食べにくるため、夜間に照明の近くでフンを見かけることが多いです。

専門家の解説
カエルのフンは、ヤモリやコウモリのフンと間違えやすいですが、見分けるポイントは「白くない、黒一色」であることです。ヤモリのような尿酸の塊がついておらず、全体が均一な黒っぽい色をしています。水分を多く含んでいるため、乾燥したコウモリのフンほどパサパサしていません。ヤモリと同様、カエルも基本的には益獣です。フンが気になる場合は掃除が必要ですが、カエル自身はそっとしておいてあげましょう。

家に出る動物のフン 特徴比較表

特に家の中やその周辺で見つかることが多い動物のフンについて、特徴を一覧表にまとめました。見分ける際の参考にしてください。

動物名 形状・サイズ 見つかる場所 見分ける最大のポイント
ハクビシン 太く長い(5~15cm) 屋根裏など(ためフン) 果物の種だらけ
イタチ 細長い(3~8cm) 屋根裏、目立つ場所 強烈な獣臭
テン やや太く短い(約10cm) 屋根裏、目立つ場所 動物の毛や骨、種が混じる
ネズミ 小さく硬い粒(5~20mm) 移動経路上に散らばる 広範囲に散らばっている
コウモリ 小さくもろい粒(5~10mm) 一箇所に大量に堆積 指でつまむと簡単に崩れる
ヤモリ 小さな黒い棒状(5~10mm) 壁や窓など垂直面 先端に白い尿酸が付いている

フンによる実際の被害事例

フンに関するよくあるご質問

庭やベランダに黒くて細長い糞が落ちていました。どんな動物の可能性がありますか?

フンの特徴によって、いくつかの動物が考えられます。

  • 果物の種が混じっていたら:ハクビシンの可能性が高いです。
  • 強烈な獣臭がしたら:イタチの可能性が高いです。
  • 動物の毛や骨、種などが混じっていたら:テンの可能性があります。

詳しくは、本記事の「特徴比較表」や、それぞれの動物の解説をご確認ください。

小さな黒い粒が床に落ちていました。ゴミか動物の糞か見分ける方法は?

ネズミ、コウモリ、ヤモリのフンが考えられます。以下の方法で見分けてみてください。

  • 硬さを確認する:硬くて広範囲に散らばっているならネズミのフンです。
  • 崩れるか試す:乾燥していて、つまむとパサパサと簡単に崩れるならコウモリのフンです。
  • 白いものが付いているか見る:フンの先に白い尿酸の塊が付いていればヤモリのフンです。
動物の糞を見つけましたが、放置しても問題ありませんか?

絶対に放置しないでください。野生動物のフンには、サルモネラ菌や寄生虫の卵など、様々な病原体が含まれている可能性があります。また、フンがあるということは動物が近くに潜んでいる証拠であり、放置すると建材の腐食や悪臭、アレルギーの原因など、被害が拡大する恐れがあります。

野生動物の糞を安全に掃除・消毒する方法は?

本記事の「感染予防と、フンの正しい処理・消毒方法」で詳しく解説していますが、最も重要なのは「吸い込まない・直接触らない」ことです。必ず、使い捨ての手袋とマスクを着用し、フンを湿らせてから静かに集めて処分してください。その後、アルコールや塩素系の消毒液で清掃しましょう。

【重要】感染症予防とフンの正しい処理・消毒方法

野生動物のフンや尿には、人の健康に害を及ぼす病原体が含まれている可能性があります。論文や公的機関の資料に基づき、安全な対処法を解説します。

フンから感染する可能性のある主な病気

乾燥したフンの粉じんを吸い込む、フンに触れた手で食事をする、といった経路で感染することがあります。

  • エキノコックス症:キツネ等のフンに含まれる虫卵が原因。重篤な肝機能障害を引き起こすことがあります。
  • レプトスピラ症:ネズミ等の尿で汚染された水や土壌から感染。発熱や腎障害などを引き起こします。
  • サルモネラ症:様々な動物のフンに含まれ、食中毒の原因となります。
  • ヒストプラズマ症:コウモリや鳥類のフンに潜むカビを吸い込むことで感染。呼吸器系の症状が出ます。

フンを処理する際の注意点

  • 【必須】マスクとゴム手袋を着用する:乾燥したフンの粉じんや病原体を吸い込んだり、直接触れたりするのを防ぎます。
  • 【換気】作業場所の窓を開けて換気する:空気中に舞った粒子を屋外に排出します。
  • 【湿らせる】フンをアルコールスプレーなどで湿らせる:粉じんの飛散を防ぎ、消毒効果も期待できます。
  • 【密閉】フンはビニール袋に入れてしっかり縛り、可燃ゴミとして処分する。
  • 【消毒】フンを取り除いた場所を、塩素系漂白剤やアルコールで丁寧に拭き取る。
  • 【手洗い】作業後は、石けんと流水で徹底的に手を洗う。

専門家の現場ノートコラム

山菜採りと、ウンチ探し

長野県に住んでいると、野生動物の駆除対策の仕事をしている場面だけでなく、ごく普通の暮らしの中でも、野生動物のフンに出会うことがあります。

春になると、たとえば八ヶ岳山麓沿いの道路では、路肩に車を止めて、山菜採りをしている人をよく見かけます。春の風物詩ですね。ワラビ、おいしいですよね。僕も好きです。とはいえ、僕はその横で、山菜には一切目もくれず、動物のウンチを探しているのですけれど。

動物と人間の境界線

車山高原や霧ヶ峰高原、それに僕が住んでいる塩尻市の高ボッチ高原周辺でも、ニホンジカの被害はとても多いです。高山植物を食べてしまう被害が、毎年のように報告されています。でも、シカは高山植物が貴重かどうかなんて、考えていません。ただ、そこにおいしそうな植物があるから食べているだけです。責められません。ただ、人間と野生動物の境界線があいまいになっていくのは、決してよいことではありません。

フンが運ぶ「見えないリスク」

たとえば、山菜採りにいって、長靴の中に水がしみたとします。そんなちょっとした水たまりでも、野生動物由来の病気に感染するきっかけになることがあります。ネズミの尿に含まれるレプトスピラ菌が混じっていて、それが足の傷口から体に入る。そうすると、発熱や筋肉痛、腎臓の不調が起きることもあります。

また、市街地のビルの狭間で、鳩の乾いたフンが風で舞い、それを吸い込んだことで、クリプトコックス症という真菌の病気になることがあります。咳や発熱だけでなく、免疫力が落ちている人では、肺炎や髄膜炎のような重い症状に進むことがあります。

野生動物の糞は、見た目は小さくても、寄生虫の卵や細菌、ウイルスなどを運ぶことがあります。たとえば、キツネのフンに含まれる「エキノコックス」という寄生虫は、人が感染すると数年後に肝臓を侵すこともあると、北海道の研究チームが報告しています。

大切なのは「前提」を持つこと

こう聞くと、少し怖く感じるかもしれません。でも、過度に不安になる必要はありません。大切なのは、「見えないリスクがある」という前提を持つことです。フンや汚れた水に触れたあとは、石けんでしっかり手を洗う。生水は必ず煮沸する。野生動物が出入りしている場所には、できるだけ近づかない。そんな、ほんの少しの注意が、自分と家族を守ることにつながります。

フンは、そこに動物がいたという小さな証しです。そしてそれは同時に、自然と人との距離を教えてくれるサインでもあります。野生動物と一緒に住まないこと、距離を保つことが大切なんです。

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