1.学会発表の機会をいただいたことに感謝して
2024年12月4日、群馬県のGメッセ群馬で開催された第40回日本ペストロジー学会において、「コテージにおけるカメムシ等の複合的対策」について発表をさせていただきました。
この発表は、今坂宏章氏(住化エンバイロメンタルサイエンス株式会社)をはじめとする、多くの関係者の皆様との共同研究の成果です。改めて、この場をお借りして心より感謝申し上げます。
2.学会発表の概要
ログハウスなど、隙間ができやすい構造の木造建築物では、越冬するカメムシによる被害が深刻化することがあります。その場合、従来の防除手法である外壁薬剤散布のみでは効果が十分ではなく、さらなる工夫が求められています。
今回対策を実施したコテージ宿泊施設では、毎年晩秋になるとクサギカメムシ、スコットカメムシ、マツヘリカメムシなどが数万匹飛来し、建物内部で越冬して、クレームを発生させていました。
今回の発表は、従来のPCO業者TCO業者のみではなく、建築士、殺虫剤メーカー、ドアブラシメーカー、商社らの、多数多様な専門家と連携して知見を持ち寄り、複合的な対策を実施することで、カメムシの侵入数を大幅に減少させたものです。
3.発表内容のポイント
1.多職種連携の重要性
各専門家が持つ知識と技術を融合し、課題解決に向けた効果的なアプローチを実現。
2.複合的な対策の実施
以下の製品などを多層的に組み合わせることで、カメムシの侵入防止効果を高めることに成功した。
A.外壁用 クモ・カメムシ用殺虫剤(ピレスロイド系化合物) 製品名:プロコートTP
B.殺虫剤成分含有 変成シリコーン系シーリング材(ピレスロイド系化合物、長期持続) 製品名:プロコート防虫シーラント
C.殺虫成分含有 樹脂製防虫ネット(ピレスロイド系化合物、長期持続) 製品名:タフガードネット
3.効果の検証と実績
対策後、カメムシの侵入数が大幅に減少。データを基にした成果を報告しました。
4.カメムシ対策に関する学会発表をした理由
私が今の仕事を始めた理由は、コウモリが好きだからなんですけど、実は、コウモリとカメムシには多くの共通点があるんです。
たとえば、アブラコウモリとクサギカメムシ。
どちらも人家でよく見かける種類ですが、「狭い隙間を好み、寒くなると建物に侵入して越冬する」という性質を持っています。
しかも、広い隙間よりも自分の体に合う狭い空間を見つけて入り込むことが多いんですが、その隙間に入り込むときの後ろ姿、これがなかなか可愛いのです。
また、コウモリには「コウモリトコジラミ」というカメムシの仲間が寄生しています。
このコウモリトコジラミという虫は、普段コウモリの血を吸って生きているのですが、それを私は飼育してみたくて、自分の血を与えて飼ったことがあるんです。そんな経験もあって、カメムシの仲間には、特別な愛着があります。
愛着があるので、カメムシ対策の依頼があれば、カメムシに会えるぞと積極的に取り組んできました。ただ、まさかその取り組みが学会発表につながるとは、正直思いもしませんでした。
カメムシでの学会発表を薦められたときは少し困惑しましたが、コウモリを好きにならなければ、カメムシに今ほど興味を持つことはなかったでしょうし、今回の発表も実現しなかったと思います。
振り返ると、好きな物はつながっていくのだなあと不思議な思いがします。
5.支えてくださった関係者の皆様へ
今回の学会発表は、私個人の力だけで実現したものではありません。多くの関係者様のご協力がありました。
特に以下の方々には多大なるご協力とご支援をいただきました。
伊藤 優一氏(一級建築士・アクティブ・プロパティマネジメント)
今坂 宏章氏(住化エンバイロメンタルサイエンス株式会社)
相阪 国広氏(長野住宅環境有限会社)
北澤 伊織氏(ナルコ薬品株式会社)
駒井 政知氏(株式会社バーテック)
光明 大樹氏(株式会社バーテック)
竹中 永典氏(鵬図商事株式会社)
松葉 健治氏(モカウッドジャパン株式会社)
また、薬剤師で信州昆虫博物館館長でもある松澤俊郎先生には、今回の発表にあたり、薬剤や化学物質の適切な使用方法についてご教授をいただきました。
学会開催中は、新井 健一郎氏と矢田 祥尉氏(株式会社バーテック)の両氏に多方面でのサポートをしていただきました。
感謝してもしきれませんが、この場を借りて御礼申し上げます。ありがとうございました。
日本ペストロジー学会HP
https://www.pestology.jp/