
この写真は、長野県の野生動物対策専門業者「かわほりプリベント」代表・山岸淳一が所有する、オオコウモリの骨格標本です。
まず注目してほしいのは、翼の骨の細さです。じっくり見ると、脚や背骨など、全身の骨が驚くほど細く、繊細にできているのがわかります。これは、空を飛ぶために「軽さ」を最優先にして進化してきた結果です。
コウモリは、空を飛べる唯一の哺乳類です。翼があるという点では鳥と似ていますが、その構造はまったく異なります。
鳥の羽は、1枚1枚が独立していて、何枚か抜けても飛行に支障はありません。
一方で、コウモリの翼は“皮膜”です。自分の腕と指の骨(手首・指)に皮膚が張り出してできた、一体型の膜。それが左右に1枚ずつ、計2枚しかありません。この翼が破れたり傷ついたりすれば、飛ぶことはできなくなってしまいます。
つまり、コウモリは「たった2枚の命綱」で空を飛んでいるのです。
この繊細な構造を知るだけでも、コウモリがどれほど特別な存在なのかが伝わるのではないでしょうか。
そして住宅被害の対策を考えるうえでも、この「骨が細く、体が軽く、わずかな隙間にも入れる」という性質は、非常に重要な意味を持っています。
このあと、コウモリの基礎知識から被害の実例、そして正しい対策の考え方まで、順を追ってご紹介します。
コウモリの基礎知識|日本や長野県に住むコウモリの特徴
コウモリは、私たち人間と同じ哺乳類に分類される動物です。
その中でも「翼手目(よくしゅもく)」という独自のグループに属し、空を飛べる唯一の哺乳類として進化してきました。
世界には約1,300種以上のコウモリが確認されており、日本国内では約35種が生息しています。
私が活動している長野県内ではおよそ20種が記録されており、山沿いの地域や市街地の住宅地、さらには古民家や倉庫などの建物でも確認されています。
体色は黒・茶・灰・白など多様で、種類によって大きさや顔つき、飛び方にも個性があります。
食性も幅広く、世界では果実や花の蜜、小動物を食べる種もいますが、日本の本州に暮らすコウモリはすべて昆虫食です。
ただし近年の研究では、ヒナコウモリ科の一部の種が、特定の時期に鳥を捕らえて食べていることが報告されました。これは非常に珍しい例ですが、注目されています。
また、意外に思われるかもしれませんが、コウモリは長寿の動物でもあります。
種類によっては、野生下で10年以上、なかには20年近く生きる例も確認されています。
さらに、本州に生息するコウモリはすべて冬眠を行う種類です。
秋になると、建物の隙間や屋根裏、トンネル、洞穴などの安全な場所で冬を越し、春の訪れとともに再び活動を始めます。
こうしたコウモリの基本的な生態を知ることは、住宅でのコウモリ被害を防ぐうえでとても重要です。
特に「なぜ家に入ってくるのか?」「どんな場所を好むのか?」といった疑問への理解につながります。
コウモリ被害解決への3つのポイント
住宅にコウモリが関与しているかどうかを調べるとき、専門家が必ず押さえる「外せない3つの視点」があります。
この3つを理解しておくことで、「今なにが起きていて、今後どんな対策が必要なのか」が見えてきます。
あとで実際の事例写真とあわせて詳しく解説しますので、まずは流れだけでもさらっと読んでみてください。

1. 種類を見極める:すべては「どのコウモリか」から始まる
被害を出しているコウモリの種類を特定することは、調査・対策の最初にして最重要ポイントです。
なぜなら、コウモリは種類によって行動範囲・ねぐらの好み・侵入方法・力の強さが大きく異なるからです。
例えば、天井裏にぶら下がるキクガシラコウモリと、壁の隙間にへばりつくアブラコウモリでは、求める空間も対策の仕方も全く違います。
また、ヒナコウモリやヤマコウモリのような中~大型種では、糞の量や尿被害の範囲も一気に広がります。
さらに、日本に生息するコウモリの過半数は絶滅危惧種です。
どの種かによっては、法的な保護対象である可能性もあるため、むやみに駆除すること自体が禁止されているケースもあるのです。
見た目だけでは判別が難しいケースもあるため、ここは専門家の知識と経験が必要になります。
2.住みつきか、休憩か:「昼間のねぐら」と「ナイトルースト」は別物

調査の現場でよくあるのが、
「コウモリが家に住みついているのか」
それとも
「夜だけやって来て外壁で休憩しているのか」
が分かっていないケースです。
もし昼間に、建物の中や隙間でコウモリが確認できたら、それは**住みついている状態(ねぐら)**です。
この場合、追い出し駆除と侵入口の閉鎖が必要です。
一方で、夜になると飛来して外壁にぶら下がるようなケースは、**ナイトルースト(夜の休憩場所)**として使われている状態。
この場合は、壁に止まらせないようにする工夫や対策が効果的です。
両方のパターンが重なっている家も少なくありません。
「ねぐらの対策をしたら、今度は壁に休憩に来るようになった」という相談も実際にあります。
住みつきと休憩、両方の視点で全体を見ておくことが重要です。
3.今ある侵入口、そして「これから狙われる場所」を見逃さない

たとえばこの写真は、住宅外壁に取り付けられたアンテナボックスの隙間です。
一見すると何の変哲もない場所ですが、ここにコウモリの尿の痕跡が確認されています。
こうした場所が、コウモリにとっては格好の“すみか”になるのです。
すでに建物の中に住みついている場合はもちろんのこと、
「今は外壁に休憩に来ているだけ」と見えるケースでも、
将来的に屋内へ侵入されるリスクはしっかり想定しておくべきです。
なぜなら、外壁にぶらさがっているということは、
コウモリに「この家は居心地がいい」と思われている証拠だからです。
そう判断される理由はさまざまあります。
近くに虫が集まる餌場がある、水場がある、
外壁の材質が凸凹していてとまりやすい、
または周囲が開けていて、飛来・離脱しやすい立地であるなど、
その家の構造や環境条件が、コウモリにとって非常に魅力的に映っている可能性があります。
特にアブラコウモリは、わずか1センチ程度の隙間があれば侵入可能です。
ほんの小さな継ぎ目や部材の合わせ目でも、十分に出入口となってしまいます。
ですから、たとえ今は被害が出ていなくても、
住宅全体をチェックして、潜在的な侵入口を先回りしてふさいでおくことが、
結果的に最も効果的で安全な予防対策になります。
ここまでご紹介した「3つの基本」は、
どれも特別なテクニックではなく、現場で当たり前に行っている基本の確認項目です。
逆に言えば、この3つさえ押さえておけば、
いま家で起きていることと、将来的に起こり得るリスクをかなり正確に見立てられるはずです。
このあとは、実際の現場写真とともに、
住宅に被害をもたらす代表的な3種のコウモリをご紹介していきます。
住宅をねぐらにする代表的な3種のコウモリ
日本に生息するコウモリのうち、長野県内には約20種が記録されています。
その中でも特に、人家や倉庫、施設などの建造物をねぐらとして利用する種が何種類かいます。
ここでは、私が実際に調査・対策を行った長野県内の現場写真とともに、
特に被害相談の多い代表的な3種──アブラコウモリ、ニホンウサギコウモリ、キクガシラコウモリについてご紹介します。
1. アブラコウモリ(イエコウモリ)
学名:Pipistrellus abramus
- 頭胴長:約37~60mm
- 体重:5~11g
- 寿命:オスは1~3年(1年以内に死亡する個体も多い)、メスは3~5年程度
日本の市街地で最もよく見られる**典型的な「家に住みつくコウモリ」**です。
天井裏、水切り、笠木の中、瓦下、換気フードの内部など、建物の小さな隙間を巧みに利用します。
▶ 夏に1〜3頭の赤ちゃんを産み、集団で子育てをする
アブラコウモリは夏に1回、1〜3仔を出産します。
出産と子育ては集団で行われることが多く、時には100頭を超えるコロニーになることもあります。
▶ わずか10円玉サイズ。それでも飛ぶときは20cm超

体だけを見ると10円玉ほどのサイズで、手のひらにもすっぽり収まります。
ただし、翼を広げると20センチ近くにもなるため、飛んでいる姿は意外と大きく見えるかもしれません。
体重はわずか5グラム前後。まさに10円玉と同じくらいの軽さです。
この軽さがあるからこそ、わずかな隙間からでも建物内に入り込むことができるのです。

この写真は、南箕輪村のご自宅で撮影したもので、換気口を下からのぞき込むと、奥に潜むアブラコウモリの姿が確認できます。
外敵から見えにくく、風雨もある程度しのげるこの空間は、コウモリにとっては格好の隠れ家。
気づかないうちに、住みつかれてしまうことも少なくありません。

写真に写っているのは千曲市の住宅の天井裏。床一面に糞が蓄積しているのがわかります。
その真下は、私たち人間が暮らす生活空間。
いくらコウモリ好きの私でも、この真下で生活したいとは思いません。
なお、このご家庭ではコウモリの気配をあまり感じていなかったそうです。
おそらく天井の断熱材が、鳴き声や動く音を吸収してしまっていたのでしょう。
こうしたケースでは、被害がかなり進行するまで気づかれないこともあります。

この写真は、塩尻市のお客様から「エアコンの中で動物のような音がする」とご相談を受け、調査に伺った際に撮影したものです。
多くの場合、配管と壁の接続部分にあるわずかな隙間からコウモリが侵入します。
エアコンのカバーや配管周辺のパテに小さな穴や劣化した隙間がないか、しっかり確認する必要があります。
一度入り込まれると、内部にはフンや尿が蓄積し、悪臭や健康被害の原因にもなります。
このような場合は、エアコンを分解しての洗浄が不可欠です。
2.二ホンウサギコウモリ
学名:Plecotus auritus
- 頭胴長:約42~63mm
- 体重:6~11g
- 寿命:10年以上の個体も確認あり
- 分類:長野県レッドリスト 絶滅危惧II類
森林性のコウモリで、廃坑・隧道・地下空間・木造住宅などを好みます。
長い耳が特徴で、ホバリング飛翔が得意なため、建物内の狭く縦長の空間でも自在に移動できます。

大きな耳が特徴で、見た目はとても愛らしく、まるでぬいぐるみのようにも見えます。
休んでいるときは、その長い耳をぴたりと折りたたんで眠ります。
しかし、このかわいらしい見た目とは裏腹に、性格はなかなかワイルド。
警戒心が強く、驚くと激しく動く個体も少なくありません。

コウモリというと「高い場所にぶら下がる」イメージがありますが、実はこうした地下空間も立派な住み家になります。
この個体は天井ではなく、壁にぴったりと張りつくようにして休んでいました。
ニホンウサギコウモリのように、壁面や垂直な構造物を好む種にとっては、地下も過ごしやすい環境といえるのです。

壁に広がる黒いシミのような汚れは、ニホンウサギコウモリの尿によるものです。
コウモリに慣れている者であれば、この尿のつき方や位置を見るだけで、どのような動き方をしていたのか、ある程度の行動パターンを推測することができます。

長期間人が出入りしていなかったため、ニホンウサギコウモリが室内をねぐらとして利用するようになった事例です。
こうした別荘では、久しぶりに訪れた際に室内でコウモリが何匹も飛び回っていたという報告をいただくことがあります。
普段使われていない建物は、野生動物にとっては静かで安全な環境になってしまうのです。
キクガシラコウモリ
学名:Rhinolophus ferrumequinum
- 頭胴長:約55~82mm
- 体重:16~35g(大型種)
- 寿命:20年前後とされる長寿種
鼻の上にある“花のような突起(鼻葉)”が特徴の中〜大型コウモリ。
洞窟、用水路、トンネルなどの暗くて湿度のある環境を好みますが、建物にも進出してくる例があります。

気温が下がる晩秋から冬にかけて、こうして多数の個体が集まり、いわゆる“コウモリ団子”状態で身を寄せ合って冬を越します。
キクガシラコウモリは、アブラコウモリやウサギコウモリのように壁に張りつくのではなく、天井に爪を引っかけて逆さまにぶら下がるのが特徴です。
この姿こそ、私たちが「コウモリ」と聞いて思い浮かべる、まさに“典型的なぶら下がり型”といえるでしょう。

いつも決まってこの天井板にぶら下がって休んでいる様子が記録されています。
この場所では、昼夜を問わずコウモリの姿が確認されるため、どうやら日中のねぐらとしても、夜間の一時的な休憩場所としても使われていると考えられます。

写真に写っているのは、とある寺院の赤い絨毯の上に落ちたコウモリの糞ですが、黒とのコントラストが強く、個人的にはどこか美しさすら感じてしまう光景です。
とはいえ、これを掃除する立場になれば、決して笑っていられるものではありません。
糞は乾燥すると粉状になりやすく、清掃にも衛生管理にも注意が必要です。

結果はご覧の通り。たった一晩で、ペーパー1枚の範囲がびっしりと汚れるほど排泄されていました。
あらためて、ねぐらとして使われる場所では、被害があっという間に進行してしまうことがわかります。
それにしても、この写真を見るたびに、「尿って本当に黄色いんだな」と、当たり前のことを妙に実感してしまいます。
ここまでの内容から、建物に住みつくコウモリは決して1種類だけではないことがお分かりいただけたのではないでしょうか。
実際には、アブラコウモリやキクガシラコウモリ以外にも、ヤマコウモリ、ヒナコウモリ、クビワコウモリ、コキクガシラコウモリなど、人口建造物を利用する種は多数確認されています。
なかには、地域によっては絶滅危惧種に指定されているコウモリもいます。
そのため、コウモリ対策を行う際には、種類をきちんと見極めたうえで、慎重に対応することが何よりも重要です。
コウモリによる被害事例
これはコウモリに限らず、野生動物が建物内で生活を始めた場合に共通する問題でもあります。
被害は、物理的な損傷や経済的なコストだけではありません。
何よりも深刻なのは、「自宅が汚されている」ということによる心理的ストレスです。
特に寝室やリビングの真上で被害が起きている場合、日常生活に大きな影響を及ぼします。

屋根の瓦の上にコウモリの糞がびっしりと積もってしまっています。
この糞は雨で少しずつ流れ落ち、やがて雨どいや外壁を汚し、詰まりや金属の腐食を引き起こす原因となります。
さらに、湿気と合わさって虫が発生しやすくなることもあり、経済的にも無視できない損害です。

これは鳥のフンとは異なる性質を持っており、近くで見ると独特のにじみ方が確認できます。
特にコウモリが繰り返し休憩に訪れる「お気に入りの場所」では、凹凸のある壁面に多くの汚れが残される傾向があります。
新築の家にこうした被害が出ると、精神的ダメージも大きくなりがちです。

体表には赤いダニのような寄生虫が確認できます。
コウモリには、種によって異なる寄生虫(ダニ、ノミ、トコジラミなど)が付いていることがあり、ねぐらとなった天井裏からダニが室内へと落ちてくるケースもあります。
こうした二次的な衛生被害にも注意が必要です。

しかし、問題はその排泄物がもたらす衛生リスクです。
乾燥したフンはダスト化して空中を漂い、人間が無意識のうちに吸い込んでしまうことがあります。
特に天井裏や換気口に住みつかれた場合、室内の空気に混ざって吸引される危険性が高まります。
実際に海外では、コウモリの糞を原因とする呼吸器アレルギーや感染症に関する論文報告もあります。
※1 下記のリンク2つは、National Library of Medicine(アメリカ国立医学図書館)の出典論文リンクです。英語ですが興味がある人は読んでみてください。
「Bat feces as an indoor allergen」(室内アレルゲンとしてのコウモリの糞)
「Respiratory allergy to inhaled bat guano」(堆積したコウモリの糞を吸入したことによる呼吸器アレルギー)
コウモリの外壁ぶらさがりとナイトルースト被害
しかし、彼らは夜通し飛び続けているわけではありません。
実際には、飛んで → 休憩して → また飛んで…という行動を繰り返しています。
このときに立ち寄る一時的な休憩場所が、住宅の外壁やベランダ、玄関先などになることがあります。
こうした**“夜のねぐら”**のことを、「ナイトルースト(night roost)」と呼びます。

実際の現場は真っ暗で、ライトを当てない限りほとんど気づかれないのが現状です。
こうして知らず知らずのうちに、住宅の外壁が「夜だけ使われるねぐら」になっていることがあります。

この写真は、アブラコウモリが固まっていたナイトルースト直下のエアコン室外機の様子です。
茶色い筋状の汚れは、雨とフン・尿が混じり合ってできたもの。
このような痕跡は、コウモリ被害の代表的なサインのひとつです。

まさに「コウモリが好みそうだな」と思わせるような、凹凸のある壁面、入角(いりかど)、影になる静かな場所に、しっかりと尿跡が残されています。
見た目にはほんのわずかな隙間や出っ張りでも、コウモリにとっては絶好の休憩ポイントになるようで、こうした狭いスペースに5〜6匹が密集して休んでいたケースもあります。

一見小さな痕跡に見えても、繰り返される接触により、外壁の塗装が徐々に黒ずんでしまうのです。
すべての外壁で同じように目立つわけではありませんが、塗装の工法や色合いによっては、汚れが特に顕著に残ることがあります。
せっかくの美観が損なわれてしまう、コウモリ被害の見落とされがちな一面です。
コウモリ駆除の7ステップ
では実際に、コウモリが家に住みついてしまった場合、どのように対策を進めていけばよいのでしょうか?
日本では、コウモリ対策に関する統一されたガイドラインが存在せず、業者ごとに手法もばらばらです。
そこで「かわほりプリベント」では、米国PMP(Pest Management Professional)の推奨手順をベースに、日本の住宅事情に合わせて独自に改良した方法で、人道的かつ科学的なコウモリ対策を行っています。
以下に示すのが、私たちが現場で実践している基本的な7つのステップです(※状況によっては前後や省略・追加がある場合もあります)。
まずは現地で、被害の出ている場所、コウモリの種類、ねぐらの位置、侵入口などを細かく調査します。
ここを曖昧にしたまま施工を進めてしまうと、再発のリスクが非常に高くなります。
調査結果をもとに、建物の構造や周辺環境、使用されている建材まで考慮した上で、最適な駆除・封鎖・再侵入防止の計画を立てます。
家ごとに状況は異なるため、パッケージ対応ではなく、オーダーメイドの対応が不可欠です。
特殊な**ワンウェイ器具(逆止弁のような装置)**を使い、コウモリに出口は残しつつ、再侵入はできないようにします。
完全に出ていったことを確認したうえで、封鎖作業に進みます。
天井裏や壁内部に残された糞・尿・抜け毛などの汚染物を除去し、殺菌消毒や、コウモリに寄生していたダニの駆除を行います。
この作業を怠ると、臭いやダニの発生による二次被害につながる恐れがあります。
コウモリが出入りしていた侵入穴を確実に塞ぐと同時に、断熱材の劣化や損傷があれば、交換や補修を実施します。
封鎖には専用の部材を使い、将来的な劣化や破損も見越した処置を心がけます。
昼間のねぐらだけでなく、**夜に外壁にとまって糞尿をする“ナイトルースト”**への対策が必要になる場合もあります。
好まれやすい壁面には、コウモリがとまりにくくなるような特殊な処置を施します。
すべての作業が完了した後、再侵入や外壁汚染が起きていないかを最終確認します。
正しい順序で、コウモリの行動に沿った対策を
コウモリは野生動物であり、時に予想外の行動を取ることもあります。
だからこそ、生態に基づいた対策と、論理的な施工の順序が大切なのです。
コウモリ被害を本気で解決したい方は、ぜひこれらのステップを頭に入れて、
「なぜこの手順が必要なのか」まで理解できる専門業者に相談することをおすすめします。
実際の被害写真や駆除の流れを見たい方へ
別記事で、詳しく解説していますのでよろしければご覧ください。
👉 [コウモリの駆除と対策の説明書|実例と写真でわかる完全ガイド]
コウモリ駆除のよくある質問
忌避効果は効果が短く、追出し駆除にもおすすめできません。
一時的な効果しかなく、駆除には不向きです。
市販の忌避スプレーの多くは、薬剤の効果が数時間(3~6時間程度)しか続かないとされています(※メーカー公表値)。
一見手軽に見えますが、持続性がないため、コウモリを確実に追い出すことはできません。
さらに、忌避剤を隙間に噴射しても、コウモリが人間の想定とは違う方向に逃げることが多く、壁の奥などに入り込んで出られなくなってしまうリスクもあります。
そのまま中で死んでしまえば、異臭やダニの発生など、より深刻な問題に発展するおそれも。
ご自宅はこれからも長く暮らす場所。リスクの高い方法での駆除は避けるべきです。
コウモリの忌避剤の効果と影響について解説した記事を書きましたので、興味のある方はこちらをご覧ください。
かわほりプリベント山岸淳一執筆記事 「コウモリ忌避スプレーの効果はあるのか?専門家が科学と現場から解説」のリンク
その可能性は高いです。
コウモリは、夜間に飛びながら超音波(エコーロケーション)を使って獲物を探しています。
この超音波は人間の耳には聞こえにくいのですが、仲間同士でコミュニケーションをとるときには、人間の耳でも聞こえる“キーキー”“ジッジッ”という音を出すことがあります。
私が現場で調査しているときも、ねぐらの中でコウモリたちがよく「おしゃべり」しているのを耳にします。
「怒っている」「警戒している」「位置を知らせ合っている」など、状況によって声のトーンも変わるんです。
ちなみに、私は**バットディテクター(コウモリ探知機)**を使って、人間には聞こえない超音波の波形を可視化しながら調査を行っています。
この技術を活用することで、見えないコウモリの存在や行動パターンを捉えることが可能になります。

参考文献・外部リンク
- Lin RY, Evans R. Bat guano as an indoor allergen and source of Histoplasma capsulatum.
J Allergy Clin Immunol. 1987 May;79(5):764–7.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/3554971/ - De Bernardis F, et al. Respiratory allergy to bat guano: a new allergen in the tropics?
Ann Allergy Asthma Immunol. 1999 Jan;82(1):65–9.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/9988491/ - 長野県環境保全研究所『長野県レッドリスト(2020年改訂版)』
https://www.pref.nagano.lg.jp/kankyo/hogo/rdb/ - 日本哺乳類学会編『日本の哺乳類 改訂版』文一総合出版
- コウモリの会 編『識別図鑑 日本のコウモリ編』
著:大沢夕志・大沢啓子・佐藤顕義・佐野 明・福井 大・三笠暁子・水野昌彦・安井さち子
監修:佐野 明・福井 大|文一総合出版(2023年)
https://jp-bats-society.hp.peraichi.com/koumorinokai
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