目次
まずは日本と長野県のコウモリのことを詳しく
コウモリって何者?
コウモリとは、鳥ではなくて、哺乳類に属する野生動物です。
コウモリは哺乳類で唯一自力で飛ぶことのできる生き物で、世界に約1300種、日本に35種が生息しています。
世界で一番大きなコウモリは1.5キロにもなるジャワオオコウモリ。一番小さいコウモリは、1.5グラムほどしかないキティブタバナコウモリ。体重差が1000倍です。
食べ物も生活環境もさまざま。食性は昆虫食が7割弱と一番多く、果実や花粉などを食べる植物食が約3割、残りの少数が魚を食べたり、カエルを食べたり、動物の血を吸ったりするコウモリです。
ちなみに日本には吸血コウモリはいません。日本のコウモリは、33種が昆虫食で、2種が植物食です。
コウモリは夜行性で、昼間は昼のねぐらで寝ています。ねぐらはどこかというと、これも種によって違います。洞窟や岩の裂け目だったり、葉っぱや樹皮の中に包まっていたり、屋根裏や壁の中にいたりと、コウモリはいろいろな場所で寝ています。

長野県に生息しているコウモリたち
日本に生息しているコウモリ35種のうち、長野県には、20種弱のコウモリが生息しています。
街の中でよく飛ぶ姿を見かけるのはアブラコウモリ(イエコウモリ)。洞窟や隧道にはモモジロコウモリやキクガシラコウモリがいて、樹洞にはヤマコウモリが住んでいます。乗鞍高原にはクビワコウモリが夏の間だけ住んでいますし、上高地のキャンプ場の夜空には、二ホンウサギコウモリが飛ぶ姿が見られます。
そして長野県のコウモリの半数以上が、絶滅が危惧される種(レッドリスト)だったりします。
また、長野県に住むコウモリはすべて「鳥獣保護管理法における野生鳥獣」となりますので、駆除するにあたっては許可なく殺すことはできません。

建物に住みつくコウモリとは
長野県のコウモリで、人家を利用することを私が実際に確認できた種は、アブラコウモリ、クビワコウモリ、コキクガシラコウモリ、二ホンウサギコウモリ、ヤマコウモリの5種です。
他にはキクガシラコウモリも人工の建造物を利用しますし、私は見ていませんがヒナコウモリとヒメホオヒゲコウモリが人家利用した事例を仲間から聞いているので、他の種も住宅を利用することがあるかもしれませんね。
私へのコウモリ駆除依頼の80%はアブラコウモリ(イエコウモリ)です。住家性コウモリという人間の建物だけを住処とするコウモリです。

コウモリが建物内に住みついてしまう問題
私のもとへ来るコウモリの駆除相談は、2つのケースがあります。
「建物内、天井裏や壁の中にコウモリが住みついてしまった」というケース。
もうひとつは、
「コウモリが夜になると外壁にとまって糞をして困る」というケースです。
建物内に住みついてしまった場合の実例と私が実施している対策案を説明します。
まず、アブラコウモリは、洞窟には住みません。人間の作った建物だけをねぐらに生活をします。
アブラコウモリがよくいる場所は、天井裏、壁の中、換気扇、瓦の中、雨戸の戸袋、シャッターの箱の中、外壁内部の通気層など。在来工法の住宅だと、妻飾りも好みます。
小さなコウモリなので、高さ8ミリ×幅1.5センチ程度の隙間で侵入してしまいます。
メスのアブラコウモリが住宅に住みついた場合、そこで冬眠し、出産と育児、また冬眠と過ごして数が増えていくことが多いです。コロニーが大きくなると100頭を超えるアブラコウモリが一緒に住むこともあります。
アブラコウモリのオスはだいたい1匹でいます。オスのほうがメスより寿命が短いですし。なんか悲しいですね。
コウモリが住みついた被害事例写真




コウモリが住宅や建物に住みついた場合の駆除対策
野生のコウモリを環境省や都道府県知事の許可なく捕獲したり傷つけたりすることは禁じられています。
ですので、コウモリ駆除と言っても、コウモリを殺すことはしません。コウモリには出て行ってもらうのです。
1.専門の調査機器を使って調べる。(コウモリの種類と大まかな数、被害状況、侵入経路と今後侵入が予測される隙間の特定など)
2.隙間の大まかな封鎖とコウモリ専用の出口デバイスをとりつける。
3.内部にコウモリを閉じ込めないように追い出す。この時に特殊な薬剤を刷毛で塗って出ていきやすくすることもあります。
4.コウモリが建物内にいなくなったことを確認し、出口デバイスの取り外しと完全封鎖。
5.必要に応じて殺菌消毒、糞の清掃、コウモリに寄生するダニの殺虫などをして完了。

コウモリが外壁、玄関、ベランダなどの軒下にぶらさがる問題
「夜になるとコウモリが外壁やベランダの軒下に来てとまっている。」
「朝になると壁や床に糞や尿が落ちていている。汚くて困っている。」
このような相談はとても多いです。このコウモリの壁どまり問題を考えるため、アブラコウモリの一日をお話しします。
アブラコウモリは、昼間は建物内で寝ていてます。暗くなってくると飛び出し、狩りに出かけます。虫をおなか一杯食べて、明け方になると昼間寝ていたねぐらに戻っていきます。
アブラコウモリは、一晩中狩りをしているわけではなくて、ある程度狩りをすると、休憩をします。お気に入りの壁に爪を引っかけてぶらさがって休憩し、しばらく休んでまた狩りに飛んでいく。これを何度も繰り返します。このぶらさがる休憩場所を、夜のねぐら(ナイトルースト)と言います。
アブラコウモリはお気に入りの虫の狩場と、お気に入りのナイトルーストを複数持っていて、一晩でローテーションのように回ります。この時に住宅の壁でコウモリが休憩すると、人間にとっていくつか困ったことがおきます。次の写真を見てみましょう。

この写真は典型的なアブラコウモリのナイトルースト写真なんですが、白い縦のシミがありますね。これはコウモリのおしっこの汚れです。コウモリの尿は透き通った黄色なんですが、このように壁で尿が乾くと白っぽくなることが多いです。
この汚れがなかなか取れない。無理に汚れを除去しようとすると、壁の塗装を痛めてしまうし、色が変わってしまうのです。
ナイトルーストがある壁を見ると、凹凸のある外壁の被害が多いことがわかります。特に黒色、紺色、灰色などの外壁塗装をしている住宅は、尿のよごれが非常に目立つ傾向にあります。
次の写真。これは長野県に箕輪町のお客様なんですが、夜になるといつもコウモリが窓の上にとまっているという相談でした。

この壁の隅、入角のところがコウモリのお気に入りで、1匹のこともあれば複数がかたまって団子になっていることもあるということでした。
先ほどの写真と比べて、窓の上の隅に黒い汚れが目立ちますね。その下に白いおしっこシミが流れた跡のようについています。
この黒い汚れは、コウモリの体と壁が擦れたときにできる汚れです。「ラブサイン」とも言います。この汚れは、明るい色の塗装だと特に目立つ傾向にあり、白色やベージュだとはっきり表れることが多いです。次の写真いきましょう。

コウモリが休憩する場所の壁や床には、1センチほどの糞が落ちます。尿が垂れていることもあります。
専門家のコウモリのナイトルースト対策
私が現在おこなっているコウモリ駆除の外壁対策は、コウモリがとまりやすい壁に、コウモリ飛来防止反射板という独自の対策製品を取りつけて、コウモリが壁にとまることを防止するというものです。
コウモリを研究しているなかで、アブラコウモリが休憩場所へぶらさがるとき、「壁を超音波と実際の目の両方を使ってみている」ということがわかってきました。我々人間は行き先を眼だけで見ていますが、アブラコウモリは両方を使って止まる壁を見ているのです。この習性に着目して開発した製品です。
既に複数のお客様宅でこの対策工事をおこなっていますが、対策工事を行ったすべての現場で糞の減少率が95%以上という結果が出ています。
施工事例写真、工事前、工事後の画像です。



この私のおこなっている対策は、アブラコウモリのナイトルーストに対して非常に高い効果が見込めますが、4つほどまだ解決できていない問題があります。
・住宅に合わせた加工が必要。
・ごくまれに取り付けができない壁がある。
・取り付けにコツが必要。
・(重要)ある特定の種類のコウモリに対しては効果が出ない可能性が高い。そのため被害をおこしているコウモリの種の同定が必要。
上記4つの問題から、私自身で工事を行う必要があります。そのため、製品の販売はおこなっておりません。ご理解をお願いします。
よくある質問(コウモリ)
-
コウモリ駆除や対策工事の料金はいくらですか?
-
現場を見ていないので、わかりません。住宅の構造や被害状況などによって変わります。
現場調査をしてない段階で、金額をご提示することは難しいです。なぜなら、コウモリ対策は、ひとつとして同じ金額の現場がない、いわばハンドメイドの1点もの現場だからです。
コウモリの種類、被害の状況、作業場所の高さ、住み着いている場所、昼のねぐらか夜のねぐらか、侵入口の大きさ、壁や塗装の材質、足場や高所作業車の必要性。ざっとあげただけでもこれだけ違いがあります。ひとつ違うだけで、材料も手間も変わってきます。
そして、コウモリの駆除は、お客様によって要望が違います。「天井裏から追い出してくれればいいよ。見栄えも気にしない」というお客様もいますし、お子様が小さなご家庭やアレルギーなどをお持ちのお客様は、コウモリの駆除だけでなく、消毒やフンの清掃もご希望になります。
ひとつひとつ違う現場を、実際に足を運んで調査して、お客様のお話を聞いて、必要な対策を考えています。ご理解いただければと思います。
-
コウモリは天井にぶらさがる生き物だと思っていたんですが、うちに来るコウモリは壁にへばりついています。
-
コウモリの種類によって休憩時の姿勢に違いがあります。
建物を利用するコウモリで、例えばキクガシラコウモリは天井にぶらさがって休憩をします。アブラコウモリは壁にぶらさがって休憩をします。ほかにも種によっていろいろな休憩姿勢があります。
-
毎年、夏になるとコウモリの糞がたくさん落ちています。冬は落ちないのですが、いなくなるのですか?
-
いなくなっている場合もあれば、その建物にコウモリは住んでいるものの冬眠しているために糞が落ちない、ということも考えられます。