コウモリの鳴き声(ソーシャルコール)とは何か?|専門家が教える定義と現場考察シリーズ3

【30秒でわかる】コウモリの鳴き声「ソーシャルコール」とは?

コウモリの聞こえる鳴き声は「超音波レーダー」ではなく「話し声、会話」

障害物を避けるための超音波(エコーロケーション)とは違い、仲間とコミュニケーションを取るための声をソーシャルコールと言います。会話に近い音声です。

人間にも「聞こえる」声ですか?

超音波よりも周波数が低いため、「チッチッ」「キーキー」「キィキィ」あるいは「カーン、カーン」など、人間の耳でも聞き取れることがあります

会話の内容は「求愛・ケンカ・子育て」

人間に聞こえるコウモリのソーシャルコールは、オスがメスを誘う時、ねぐらで場所を取り合う時、迷子になった子供が親を呼ぶ時などに使われます

コウモリの鳴き声が家の室内でどこからか聞こえたら「定住」のサイン

壁の中や天井裏からコウモリの声が頻繁に聞こえる場合、単なる雨宿りではなく、「繁殖機能を持った巣(コロニー)」が形成されている可能性が高い状態です。

コウモリの会話の鳴き声(ソーシャルコール)はどういう声なのか?

コウモリの声(ソーシャルコール)の定義

こんにちは、かわほりプリベントの山岸です。今日は、コウモリの声のひとつである、人間にも聞こえる声「ソーシャルコール」についてお話していきます。

コウモリが発する音声は、その目的によって大きく二つに分類されます。

一つは、障害物の回避や獲物の捕獲のために発する「エコーロケーション(反響定位)コール」です。

これは視覚の代わりとなるレーダーのような役割を果たします。コウモリの超音波と呼ばれるのがこの声です。人には聞こえません。

もう一つが、この記事のテーマである「ソーシャルコール(社会的音声)」です。これは個体間で情報を伝達するための「言葉」に近い役割を持ちます。

人間にも聞こえることがある、超音波の声よりも「低い声」です。

コウモリの鳴き声がどんな音なのかを動画で聞く

これは私が2025年6月に長野県の某所で撮影したコウモリの鳴き声です。大騒ぎですね。

ちょうど出産繁殖シーズンの6月なので、いつも以上に騒がしく、やかましかったです。

なぜコウモリの鳴き声が人間に「聞こえる」のか

通常、コウモリの超音波は20kHz以上の高周波数であり、人間の可聴域(聞こえる音の範囲のこと:約20Hz~20kHz)を超えています。

しかし、ソーシャルコールは、仲間との長距離通信や巣内でのコミュニケーションを円滑にするため、エコーロケーションよりも周波数が低い声の傾向があります。

特に大型のヤマコウモリなどは、10kHz前後の非常に高い音圧を持つ声を出すため、人間にも「カーン・カーン」といった金属的な鳴き声として聞こえます。

ソーシャルコールは繁殖期における求愛や、ねぐら内での小競り合い、あるいは幼獣が親を呼ぶ際など、社会的な文脈で頻繁に使用されます。

長野県松本市でバットディテクターを使用して可視化したコウモリの超音波スペクトログラム。
コウモリの「話し声」は見ることができます。この画像は長野県松本市で筆者が撮影したもので、コウモリの音声を可視化・解析しています。

壁の中から聞こえる「チチチ」「キィキィ」というコウモリの鳴き声がする理由

コウモリの鳴き声は、どんな声なのか聞いてみよう

家の中で「キィキィ」「チチチッ」という鳴き声が、特に壁の中や天井からするんです。

野生動物対策をやっている私のもとには、よくこの相談があります。この外壁や天井裏から聞こえるコウモリの声もソーシャルコールです。

そして、コウモリのソーシャルコールには、声によって意味が異なることがわかっています。

コンタクトコール
初夏の繁殖期、母獣と幼獣が暗闇の中で互いの位置を認識し合うための「呼び交わし」
威嚇・闘争音
狭い隙間(ねぐら)で個体同士が場所を競り合ったり、外敵に警戒を示したりする際の「抗議」。
求愛音
繁殖期に雄が特定の周波数で雌を誘い込むための「広告」。

これらは空間把握のための超音波(エコーロケーション)とは異なり、集団の秩序の維持や情報共有を目的としています。

住宅の屋内で頻繁にコウモリの声が聞こえる場合、そこが単なる避難所ではなく、定着性の高い「出産哺育コロニー」や「重要ねぐら」として機能している可能性があります。

コウモリ駆除にはソーシャルコールを知ることが重要

ソーシャルコールが聞こえるということは、そこに一頭のコウモリだけが一時的に滞在しているのではなく、複数のコウモリが社会的な活動(コロニーの形成)を行っている可能性を強く示唆します。

特に出産・育児期にあたる初夏や、冬眠前の活動期において、この「声」のパターンを分析することは、侵入経路の特定や被害規模の予測において、技術的に極めて重要な根拠となります。

かわほりプリベント山岸淳一の「現場考察ノート:コウモリの声(ソーシャルコール)」

山の中で聞こえるコウモリの話し声

私はフィールドワークとして、長野県の上高地でコウモリの調査研究をしています。

標高が高く静寂に包まれたフィールドにいると、深夜に響き渡る「カーン・カーン」という声がするときがあります。

上高地の空のかなり上空を大き目なコウモリ(ヤマコウモリ?)が鳴きながら移動しているのです。

この金属的なソーシャルコールが聞こえるか否かは、聴覚の個人差もあります。聞こえない人もいます。

人間が聞くことができる音の高さには、個人差があり、また年齢によっても聞こえにくくなる傾向があります。

上高地の月明かりの下、カーン・カーンと鳴きながら、高い空を横切るコウモリの姿が美しく幻想的に見えるのは、それが単なる野生生物の移動ではなく、誰かに何かを伝えようとしている姿として見ているからかもしれません。

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木造ログハウスとコウモリの鳴き声

一方で、住宅対策の現場、特に信州に多いログハウスの相談では、別の側面が見えてきます。

「冬なのに壁の中から声がする」という悩み。これはログハウス特有の「木の伝導性」が大きく関わっています。

ログ材は断熱性に優れる一方で、コウモリにとっては最高の「蓄熱体」です。日中に暖まったログの熱は夜間も保持されやすく、信州の厳しい冬であっても、暖かい日にはコウモリがトーパー(休眠)から一時的に目覚め、仲間とコミュニケーションをとる確率が高まります。

また、ログハウスの組み構造が生むわずかな隙間は、コウモリにとって完璧な防風・防寒スペースであり、そこに多数が密集することで、彼らの発するソーシャルコールが木材を伝って増幅され、住人の耳に届くのです。

「コウモリの声が聞こえる」ということは、そこが彼らにとって単なる雨宿り場所ではなく、命を繋ぐための「情報の拠点」になっていることを意味します。

対策専門家としては、その美しい鳴き声の裏にある生態的戦略を読み解き、建築構造との相関を見極めながら、人間とコウモリの適切な距離を再構築していかなければなりません。

コウモリの鳴き声(ソーシャルコール)に関するよくある質問

Q
壁の中から聞こえる「チチチ」「キィキィ」という鳴き声の正体は何ですか?
A

その正体は、コウモリが仲間とコミュニケーションをとるために発する「ソーシャルコール(社会的音声)」である可能性が高いです。

コウモリは、獲物を探すための超音波(エコーロケーション)とは別に、仲間を呼ぶ、求愛する、あるいはねぐら内での小競り合いなどの際に、人間の耳でも聞き取れる周波数の声を出します。

特に6月〜7月の繁殖期には、親子間の対話が活発になり、住宅の壁体内や換気口からこうした鳴き声が漏れ聞こえることが多くなります。

Q
コウモリの声は超音波で人間には聞こえないはずでは?
A

コウモリの声には「人間に聞こえない音(超音波)」と「聞こえる音(可聴域)」の2種類があります。

ナビゲーションに使うエコーロケーションコールは高周波の超音波ですが、ソーシャルコールはそれよりも周波数が低く設定されており、10kHz〜20kHz程度の「高い鳴き声」として聞こえることがあります。

また、大型のヤマコウモリなどは、上空を飛びながら「カーン・カーン」と金属を叩くような大きな声で鳴くことがあり、聴覚の鋭い人にははっきりと聞き取れるのが特徴です。

Q
冬なのにログハウスの壁からコウモリの鳴き声が聞こえるのはなぜですか?
A

ログハウスの高い蓄熱性と、コウモリの「トーパー(一時的休眠)」という生態が関係しています。

ログハウスに使用される厚い木材は熱を蓄えやすく、冬場でもコウモリにとって過ごしやすい温度が保たれることがあります。

冬眠中のコウモリも、暖かい日には一時的に代謝を上げる「トーパー」から目覚めることがあり、その際にねぐら内で仲間とコミュニケーション(ソーシャルコール)をとるため、冬でも「カサカサ」という移動音とともに鳴き声が聞こえることがあるのです。

参考文献

この記事の執筆者・監修者

かわほりプリベント代表 山岸淳一

山岸 淳一 (Junichi Yamagishi)

長野県を拠点に活動する「野生動物の仕分け屋」。かわほりプリベント代表。動物と人間との曖昧になった境界線を整えることを使命とし、重要文化財から一般宅まで実績多数。SBC信越放送「もっとまつもと!」にレギュラー出演中。三度の飯よりコウモリが好き。

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