かわほりプリベントの山岸淳一です。
長野県で、建物を利用するコウモリは何種かいるんですが、一番多い相談がこのアブラコウモリ(Pipistrellus abramus)というコウモリです。彼らは現在日本に生息する35種のコウモリの中でも、かなり特異な存在で、人工の建物にしかほぼ住まなくなったコウモリです。その辺を詳しく話していきたいと思います。
アブラコウモリの特徴と概要をサッと理解
アブラコウモリのスペックは、人工建造物特化型。
アブラコウモリは、ほとんどが人工建造物をねぐらにするため、別名:イエコウモリと呼ばれる。ほかのコウモリも建物に住み着くことはあるが、このアブラコウモリ(イエコウモリ)のように特化していない。
アブラコウモリは独自の繁殖力をもつ
アブラコウモリの寿命はオス約3年、メス約5年と、コウモリの中では短命です。しかし、一度に1〜4頭(通常2〜3頭)を産む「数で勝負する戦略」をとっており、他の種を圧倒する強い繁殖力を持っています。
コウモリの一日の行動と年間スケジュール
コウモリは日没前後にねぐらを出て、明け方に帰る。出てくるピークは日没後12分~20分。
3~4月に冬眠から目覚めて、6~8月に出産と子育てをし、11~12月に冬眠に入ります。
アブラコウモリ研究論文からわかった事実
オスは1頭でいることが多く、メスは子供たちと繁殖コロニーを作る。
餌となる昆虫を狩りする場所は、開けた場所を好む。
コウモリには様々なダニがいるが、吸血被害はコウモリマルヒメダニが多い。実物写真で解説した。
アブラコウモリの体長・体重・寿命と見分け方【基本データ】
まずは、スペック。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 和名 | アブラコウモリ |
| 学名 | Pipistrellus abramus |
| 別名(俗名) | イエコウモリ |
| 分類 | 翼手目 ヒナコウモリ科 アブラコウモリ属 |
| 体長 | 約4~6cm |
| 前腕長 | 3~3.6cm |
| 体重 | 5~11g |
| 侵入可能な隙間サイズ | 最小7㎜(弊社実績値) |
| 外見 | 体毛は灰褐色〜茶褐色。耳は短く丸みがある |
| 食性 | 昆虫食 |
| 分布 | 日本全国、東南アジア |
| 寿命 | オス3年程度、メス5年程度 |
| 産子数 | 1~4頭(通常2〜3頭) |
| 主要外部寄生虫 | コウモリマルヒメダニ、コウモリノミ、その他ダニ類 |


アブラコウモリの繁殖時期と季節、年間スケジュール
次はアブラコウモリの1年の過ごし方。

春(3月~4月):冬眠からの目覚めと繁殖の開始
冬眠から目覚めると、メスの体内で排卵が起こり、前年の秋から貯蔵していた精子と受精します。この「受精をコントロールする能力」が、餌の少ない冬を越える鍵となります。
夏(6月~8月):出産と子育て
6月下旬から7月に出産します。一般的なコウモリは一頭しか産まない「少産長寿」をとりますが、アブラコウモリは一度に1〜4頭を産む「多産短命」です。この多産性こそ、変化の激しい都市環境への適応した証拠です。
秋(9月~11月):精子貯蔵と冬眠準備
交尾を行いますが、すぐには受精させません。メスはオスから受け取った精子を生きたまま子宮の中に「貯蔵」して冬を越します。冬眠に備え、体重が大幅に増えるほど脂肪を蓄えます。
冬(11月中旬~3月中旬):冬眠
家屋の壁の中や屋根裏など、乾燥して温度変化の少ない場所で冬眠に入ります。ただし、時々覚醒し、移動したり水を飲みに出たり、間違ってうっかり室内へ出てきてしまうことがあります。
アブラコウモリの子育て時期と赤ちゃんについて

アブラコウモリの子育ては、6月~8月頃に、メスだけで行われます。出産哺育コロニーと呼ばれる集団を作り、お互いの体温で温め合い、子供の成長に適した高温環境を維持しています。
子供は母親のお乳で育ちます。授乳期間は約1か月。母親は授乳期間中も夜になると、虫を食べに出かけますが、子供は天井裏などでお留守番しています。
アブラコウモリの活動時間と日没後の行動パターン

アブラコウモリの夏のある一日
- 05:00 〜 19:00|睡眠・休息
睡眠。体温を下げてエネルギーを節約する(日内休眠)。夕方が近づくと目覚めて毛づくろいなどを始める。 - 19:00 〜 19:30(夏)|待機・出巣
日没後、安全を確認して一斉に飛び出す。日没から12分~20分後がピーク。 - 19:30 〜 21:30|第1次 摂食ピーク
空腹なので最も活発に虫を食べるゴールデンタイム。 - 21:30 〜 03:30|【休憩】ナイトルースト
外壁で休憩したり、時々飛んだりする「中休み」の時間。 - 03:30 〜 04:30|第2次 摂食ピーク
夜明け前、帰宅前の最後の食事。 - 04:30 〜 05:00|帰巣
明るくなる前にねぐらへ戻る。
アブラコウモリが家に住み着く条件と好む隙間
アブラコウモリは昼間のねぐらでなにをしているのか?

アブラコウモリは昼間のねぐらで主に睡眠をとっています。ただ、単に眠るだけでなく、体温を環境温度近くまで下げてエネルギーを節約する「日内休眠(トーパー)」を行っています。
また、夏にはメスが集団で出産や子育てに励む一方、オスは単独で休息していることが多いです。その他には毛づくろいなども行い、夕方からの活動に備えています。
アブラコウモリの巣はどこにある?
アブラコウモリはほぼ人間の建物(家屋の天井裏、瓦の下、換気口、ビルの隙間、高架橋など)をねぐらにします。自然洞窟の記録もあるが稀です。
「イエコウモリ」という別名が示す通り、人間がいなければ生きていけないほど深く都市環境に適応しています。
アブラコウモリにとって、繁殖のために夏は「暑いこと」が重要で、冬は「寒すぎず温度変化が少ないこと」が重要です。このため、人間の建物で天井裏や外壁の中などが好まれるのです。


他種との住み処の違い:アブラコウモリが家を選ぶ理由
他のコウモリも人工の建物を利用することはあります。実際に私もよく別のコウモリの対策をします。しかし、人間の建物「しか」使わないというコウモリは、アブラコウモリだけです。
例えば、私の住む長野県では、クビワコウモリ、ヒナコウモリ、ニホンウサギコウモリなどが人間の住宅に住み着いてしまうことがあります。しかしこれらは、人間の建物のみに特化しているわけではなく、木の隙間にいたり、岩の裂け目にいたり、人の家を使ったり、いろいろなのです。
まとめると、人工の建物に適応し特化したのがアブラコウモリ。人工の建物も使うけど、特化していないのが他の種のコウモリです。
アブラコウモリの生息地・日本と世界の分布
アブラコウモリの世界の分布状況
アブラコウモリは日本以外にもいます。東アジアを中心に広い範囲に分布しています。 北はロシアのウスリー地方から、朝鮮半島、中国大陸、台湾、そして南はベトナム、ラオスなど。
アブラコウモリの日本国内の分布状況
北海道南部から沖縄まで広く分布しており、47都道府県で記録があります。
南西諸島(種子島、屋久島、奄美大島、沖縄島、宮古島、石垣島、西表島、与那国島)にも生息が確認されています。
アブラコウモリの長野県内の分布状況
私が住んでいる長野県全域で生息が確認されています。
地域による生息の多い少ないはあるのか?
「日本中どこにでもいる」といっても、その密度には地域差があります。
北海道のアブラコウモリの分布について
北海道のアブラコウモリの分布は南部に限られています。
アブラコウモリの近縁種について
日本にはアブラコウモリの仲間が他に2種知られています。
- モリアブラコウモリ 日本固有種ですが、アブラコウモリとは対照的に深い森林に住み、樹洞などをねぐらにします。都市には出てきません。
- オガサワラアブラコウモリ 小笠原諸島にいた固有種ですが、明治時代に記録されただけで、現在は「絶滅」したと考えられています。
モリアブラコウモリは珍しくて、私も長野県の上高地で一度しか見たことがありません。
判別としては、モリアブラコウモリは陰茎骨がほぼ真っ直ぐ、アブラコウモリはS字にカーブするということです。このモリアブラコウモリは建物内で見つかった事例もあるようなんですが、私は建物内で見たことはありません。
世界分布から見えてくるアブラコウモリのシナントロープ
アブラコウモリがどうやって人間の生活に適応して繁栄してきたのか、そのヒントが海外のアブラコウモリにあります。
日本ではほぼ人工建造物にしか生息しないアブラコウモリですが、海外では洞窟などを利用している事例があります。
地域によって異なるようで、ある地域では人工建造物ばかりしかねぐらにしないが、ある地域では洞窟など自然のねぐらも利用しているといった形です。
つまり、アブラコウモリは、建物・人工構造物を主要ねぐらとするシナントロープ種(人間の建物や都市環境に強く依存して繁栄している野生動物)であるという認識で間違いないけども、その度合いには地域で差がつくことを示唆するものです。
アブラコウモリの吸血性ダニ(コウモリマルヒメダニ)について被害と実例を写真で解説

アブラコウモリには、吸血性のダニが寄生していることがあります。実際、私のもとにも「コウモリのダニに刺されて困っている」という切実なご相談が数多く寄せられます。ここでは、現場で実際に捕獲した個体と知見をもとに、その正体と被害のメカニズムについて解説します。
アブラコウモリに寄生するダニの特定
コウモリの種類によって寄生するダニの種類は異なりますが、アブラコウモリにおいて、人間への吸血被害が最も多く報告されるのはコウモリマルヒメダニです。
- 和名:コウモリマルヒメダニ
- 学名:Carios vespertilionis
- 分類:ダニ目 ヒメダニ科 カリオス属
- 体長:約4~6mm
- 特徴:平べったい

コウモリの寄生虫が人間を刺すメカニズム
このダニは本来、人間を主なターゲットとしているわけではありません。被害が発生する背景は、以下のような場合が多いです。
コウモリマルヒメダニの通常時の生態
普段はコウモリを吸血源とし、天井裏や換気口といったコウモリの「ねぐら」の中に潜んでいます。
吸血源の消失と移動
建物に住み着いていたコウモリが移動したり死亡したりすることで、吸血対象がいなくなると、飢えたダニは新たな吸血源を求めて行動を開始する傾向があります。
室内への侵入と吸血被害(噛まれる・刺される)
吸血源を失ったダニは、天井裏などの隙間から居住スペースへと降りてきます。その際、コウモリの代替となるターゲットとして他の生き物(人間や犬猫などのペット)を吸血することがあります。
刺された箇所はかさぶた(痂皮)のようになり、激しい痒みや炎症を伴う方もいらっしゃいます。被害がひどい場合は、速やかに医療機関(皮膚科など)へ相談することを強くおすすめします。
さらに詳しいコウモリの寄生虫ダニの情報について
コウモリに寄生するダニ・トコジラミ・ノミについては、以下の記事で詳しく解説しています。あわせて参考にしてください。
次のセクションでは、アブラコウモリの生息地について解説していきます。
研究からわかるアブラコウモリの行動と生態
研究1:餌場より飛行効率を選ぶ理由
まず1本目に紹介する論文は「都市部におけるアブラコウモリの飛翔活動の季節的変化と活動場所の選択」 著者:塔筋 太郎・柴田 叡弌(名古屋大学) 発表年:2003年です。
この研究は、都市部の緑地(名古屋大学構内)において、アブラコウモリが「いつ」「どこで」飛んでいるのかを調査したものなんですが、アブラコウモリの面白い事実がわかりました。

調査の方法と内容
バット・ディテクター(超音波探知機)を使用し、キャンパス内の異なる環境(オープンスペース、二次林、水場など)で、アブラコウモリの飛翔活動と、餌となる昆虫の量を1年を通して調査しました。
研究の結果
アブラコウモリが飛び始めるのは、日没時の気温が15℃を超えてからであった(2月中旬頃)。逆に、12月に入って15℃を下回ると活動が見られなくなったことがわかった。
アブラコウモリの活動は、気温の上昇とともに活発になります。5月中旬から7月上旬にかけて一時的に飛翔確認数が減少し、7月下旬から9月上旬に再び増加した。これは出産・子育て期にメスの活動が制限されることや、その後幼獣が巣立って数が増えることを反映していると考えられた。
ここからが最も興味深い点です。
餌となる昆虫は「二次林(森の中)」に最も多く生息していた。しかし、アブラコウモリが最も多く飛んでいたのは、二次林(昆虫が多い森)ではなくて、水場(池)やオープンスペースだった。
かわほりプリベント山岸淳一による論文解説
これはすごい面白い研究結果だと思うんです。
「二次林のほうが昆虫が多かったのに、アブラコウモリが多く飛んでいた場所は水場や開けた場所だった」
この研究結果は、アブラコウモリが他のコウモリとはだいぶ違うということを物語っています。
例えば、私が長野県の山の中で森林性のコウモリを調査しているのですが、森の中で餌の昆虫を採餌しているコウモリはとても多いんです。
もちろん川面などがあればそこでも見られますが、それよりも、森の中で木立があってその下には背の低い草木が生えている、こういったところで餌をとるニホンウサギコウモリ、コテングコウモリ、ヒメホオヒゲコウモリなどをよく見ています。こういった場所は虫が多いのでしょう。
そういった森林性のコウモリたちとちがい、都市に適応したアブラコウモリには、森の中は障害物(枝や葉)が多く、超音波を使って飛び回るには、ちょっと複雑すぎる空間(閉鎖的な空間)であるのかもしれません。
アブラコウモリは、餌の絶対量が多少少なくても、障害物がなく飛行しやすい開けた空間を選んで効率よく狩りをしていることが示唆されたわけです。
これは、アブラコウモリが「餌が多ければそこに行く」という単純な図式ではなく、自身の飛行能力と空間構造のバランスで場所を選んでいる証明なのかもしれません。
研究2:屋根裏での性差とコロニー構造
論文タイトル:アブラコウモリの日中ねぐらにおける単独個体と集団の性・繁殖ステージ構成 著者:安井 さち子 発表年:2010年
2本目もアブラコウモリの研究を紹介します。この研究は、安井先生が東京都府中市の住宅地で発見された60ヶ所以上の「昼間のねぐら」を調査し、中にいるコウモリの性別や年齢を詳しく調べたものです。

研究の内容
民家の瓦の下などを出入りするコウモリを捕獲し、「単独でいる個体」と「集団でいる個体」の性別や繁殖状態(妊娠・授乳など)を確認した。
明らかになった事実
ねぐらを単独で利用していた個体のほとんどは「成獣のオス」だった。これまでオスは単独生活をしていると言われてきたが、それがデータとして裏付けられた。
一方、集団(コロニー)を作っていたのは、ほぼすべて「成獣のメス」か、「成獣メスと幼獣の組み合わせ」だった。これが「出産哺育集団(マタニティコロニー)」である。集団の中に成獣のオスが含まれていることは極めて稀で、いても2頭以下だった。
また、メスは出産・子育てのために集まって体温を維持し、協力して子育てを行うが、子育てに関与しないオスは、単独で(気ままにあるいはエネルギーを節約して)暮らしているという、明確な性的棲み分けが家屋の隙間で行われていることがわかった。
引っ越しすることがあることもわかった。メスは同じねぐらに戻ってくる傾向があったが、最大で87メートル離れた別のねぐらへ移動した例も確認され、近隣の複数のねぐらを使い分けている可能性が示された。
かわほりプリベント山岸淳一による解説
これも大変な労力がかかった面白い研究です。なんだかオスの私としては少し申し訳ないというか、特に子育てに参加しないというところで、子供の相手をせずにコウモリの研究に行ってしまうことが多いので、なんとも言えない気持ちになります。
言い訳をするわけではないんですが、哺乳類において、子育てに参加しないことはごく普通のことでありまして、一説によると哺乳類の8~9割くらいは、オスは子育てにほとんど関与しないとも言われています。
なぜオスは参加しないのかという理由はいくつか推測できるのですが、どれも行きつく先は結局、「参加せずにいたほうが、子孫を増やすことになり、遺伝子を残すうえで有利になりやすいから」ということです。
ひとつ詳しく説明しますと、アブラコウモリのオスはメス(寿命約5年)に比べて短命で、多くは3年ほどしか生きられません。特に1歳までの生存率はわずか10~20%程度とも言われており、冬の死亡率が非常に高いです。
このことから、メスが出産子育てしている時期は、オスは参加せずに体力を温存し、秋の交尾に向けて全振りしていると言えます。そうしないと、秋の交尾の競争に負けてしまったり、高い冬の死亡率に耐えきれない可能性があるのです。
まあもう一つ考えられる理由は、アブラコウモリは「一夫一妻」のようにペアが決まっているわけではないことです。
アブラコウモリは秋に入り乱れて交尾をし、翌年夏に子供が生まれます。そのため、オスには本当に自分の子供かどうかの確証がもてません。だから、子育てするよりも、次の交尾に備えるほうが戦略として有利ということなのかもしれません。
なぜアブラコウモリは家に来る?建物を選ぶ理由と対策
なぜ、アブラコウモリは人工の建物ばかりを好むのか
私は長野県で野生動物対策の仕事をしているのですが、現場でふと思うことがあります。それは、彼らが「ここは人間の家だ」とか「ここは自然の岩場だ」といった線引きを、驚くほど気にしていないのではないか、ということです。
「罠」を避けるのは、知恵比べではない
例えば、ネズミの通り道に設置した粘着シート。彼らは面白いほどこれを避けます。時にはシートの端の、糊が付いていない1センチだけを狙って歩くことさえあります。
これを見ると、人間は「罠だと見破られた」と思いがちですが、実際はもっとシンプルです。動物行動学ではこれを「ネオフォビア(新奇恐怖症)」と呼びます。
彼らにとって重要なのは、それが罠かどうかではなく、「昨日までなかった違和感がある」ということ。彼らの生存は「いつもと同じ(恒常性)」であることがとても重要で、その平穏を乱す「未知の異物」を本能的に避けているに過ぎません。
建物は、彼らにとって「スペックの高い岩」
この「条件への執着」という視点は、アブラコウモリの習性を解き明かす鍵になります。
アブラコウモリは人工の建物ばかりに住み着きますが、アブラコウモリたちが「人工物が好き」なわけではありません。
海外の研究でも、コウモリが住処を選ぶ基準は「建物か自然物か」という属性ではなく、「隙間の幅・深さ・温湿度・外敵からの安全性」といった純粋な物理条件であると報告されています。
彼らにとっては、岩の割れ目も、住宅の外壁サイディングのわずか1.5cmの隙間も、条件さえ満たしていれば等しく「利用可能な隙間」なのです。
結論:結果としての「建物依存」
隙間に潜り込んでみたら、そこには断熱材があって外気より温度が安定していたり、子育てに都合の良い暖かさがある。しかも、現代の日本の市街地には、天然の岩場とは比較にならないほどの数の「隙間(住宅、橋、高架)」があふれています。
つまり、彼らは「建物を選んでいる」のではなく、「生存に有利な条件を追求し続けた結果、その選択肢のほとんどが建物だった」だけなのです。
私たちが「建物ばかりに住む種」だと思っているアブラコウモリの姿は、実は彼らの徹底した合理性が、現代の都市環境に適応しきった結果を映し出しているのだと言えるのではないかと思います。
アブラコウモリのよくある質問Q&A(被害・対策)
いいえ、コウモリは「翼手目(よくしゅもく)」という哺乳類の仲間です。赤ちゃんを産んでおっぱいで育て、体は毛に覆われています。
主にユスリカ、ヨコバイ、小さなガ、カメムシなどの昆虫を食べています。
非常に食欲旺盛で、一晩に自分の体重の半分近く(数百匹以上の小さな虫)を食べると言われています。
昼間は「ねぐら」と呼ばれる場所で休んでいます。民家の屋根裏、瓦の下、外壁の隙間、戸袋、高架橋の継ぎ目など、狭くて暖かい隙間を好みます。
「エコーロケーション(反響定位)」という能力を使っています。口から人間には聞こえない高い音(超音波)を出し、その跳ね返りを聞くことで、周囲の障害物や獲物の位置を正確に把握しています。

エコーロケーションに使う超音波は通常人間には聞こえませんが、ねぐらの中で仲間同士が鳴き交わす「チチチ」という声や、威嚇する時の声などは聞こえることがあります。
アブラコウモリと同じグループであるヒナコウモリが屋根裏にいる時に騒いでいる声をYoutubeショート動画にアップしましたので、聞いてみてください。
コウモリが自分から人間を襲うことはありません。ただし、素手で捕まえようとすると身を守るために噛みつくことがあります。鋭い牙を持っているため、絶対に素手で触らないでください。
野生動物であるため、何らかのウイルスや寄生虫を保有している可能性はあります。日本国内でコウモリ由来の重篤な感染症の発生報告は私が知る限り確認されていませんが、健康リスクを避けるため、糞や個体には直接触れないのが原則です。
窓を全開にして、自然に出ていくのを待つのが最も安全です。追いかけ回すと隙間に入り込んでしまうため、明かりを消して出口を誘導しましょう。
最大の違いは「壊れやすさ」と「ねじれ」です。アブラコウモリの糞は、主食である昆虫の不消化物(外骨格の破片、複眼、翅など)で構成されているため、乾燥するとパサパサになり、指で押すと容易に粉々に砕けます。また、アブラコウモリ特有のねじれが見られる点も、ネズミや爬虫類(ヤモリなど)の糞との重要な識別点です。
はい、原則として禁止されています(違法行為となります)。
「鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律(鳥獣保護管理法)」この法律の第8条により、「鳥獣及び鳥類の卵は、捕獲等(捕獲または殺傷)をしてはならない」と定められています。
学術研究や、生活環境・農林水産業への被害防止(やむを得ない駆除)などの目的がある場合に限り、環境大臣または都道府県知事の「許可」を得れば捕獲・駆除が可能になります。
法律の基本的な考え方として、そもそも野生動物は基本的に保護されています。コウモリだけではありません。
野生動物の中で、例外として家ネズミ3種(クマネズミ、ドブネズミ、ハツカネズミ)が許可が不要なくらいで、その他の野生動物はすべて原則許可が必要です。
また、その他の例外事項として、農林業の事業活動に伴うやむを得ない捕獲に限り、特定の小動物については例外的に許可なく捕獲・駆除が可能(モグラや野ネズミ)となっています。
法律については以下の環境省のサイトをご覧ください。
法律論ではない話としては、日本に住むコウモリのほとんどは、アブラコウモリとは対照的に、1年に1頭しか産みません。数を減らしてしまうと、元の数に戻るまでに非常に長い時間がかかります。そのため、法的に強く守る必要があります。
日本には35種類のコウモリがいます。研究者でない限り、その多くは見分けがつきません。ですので、全種を法律で守ることは合理的です。
基本的に、捕獲許可は厳しいと思います。
一般の方が、単に「家にいて気持ち悪いから」といった理由で許可を得ることは難しく、現実的な対策としては「殺さずに追い出す(出口を一方向にして戻れなくする)」方法が推奨されています。
アブラコウモリは日本全国に広く分布していますが、北海道においては「南部」でのみ生息が確認されています。
アブラコウモリの赤ちゃんがねぐらから落ちてしまうということは、まれにあります。
基本的には、そっとしておくか、ねぐらがある場所へ戻すか、です。これはコウモリに限らず、どの野生動物でも同じです。それ以外の場合や、明らかにケガをしていて保護が必要な場合は、都道府県の鳥獣保護担当部署に相談してください。
激しい痒みや炎症、かさぶた(痂皮)などの症状がある場合は、早めに皮膚科などの医療機関を受診してください。
現場では、コウモリマルヒメダニによる吸血被害により、患部がひどく荒れてしまうお客様を多く目にします。野生動物の寄生虫による二次被害は、ご自身での判断が難しいため、まずは専門医に相談することをおすすめします。
その上で、原因となっているコウモリを追い出し、ねぐら(侵入経路)を遮断しなければ、ダニの発生は止まりません。医療機関での治療と並行して、専門家による防除対策を検討してください。
参考文献
図鑑・書籍
コウモリの会 編、佐野 明・福井 大 監修(2023)
「識別図鑑 日本のコウモリ」文一総合出版
研究1
塔筋 太郎・柴田 叡弌(2003)
「都市部におけるアブラコウモリの飛翔活動の季節的変化と活動場所の選択」
- J-STAGE(哺乳類科学 43巻2号, pp.113–120)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/mammalianscience/43/2/43_2_113/_article/-char/ja/ - CiNii Research(メタデータ・所蔵情報など)
https://cir.nii.ac.jp/crid/1390282679700560768
研究2
安井 さち子(2010)
「アブラコウモリの日中ねぐらにおける単独個体と集団の性・繁殖ステージ構成」
- CiNii Research(哺乳類科学 50巻1号, pp.49–54)
https://cir.nii.ac.jp/crid/1390001204724377088
長野県・新潟県・山梨県・岐阜県のアブラコウモリ駆除対策なら「かわほりプリベント」へ
かわほりプリベントでは、長野県全域を中心に、隣接する新潟県、山梨県、岐阜県の一部地域において、アブラコウモリの専門的な調査・防除対策を行っています。
単に追い出すだけでなく、本記事で解説した「最小7mm」の隙間を確実に塞ぐ技術や、吸血性ダニ(コウモリマルヒメダニ)の殺虫・消毒まで一貫して対応可能です。信州の厳しい気候や家屋構造を熟知した専門家が、再発させない確実な施工をお約束します。
長野県(全域対応)
中信地域
松本市、塩尻市、安曇野市、大町市、池田町、松川村、白馬村、小谷村、麻績村、生坂村、山形村、朝日村、筑北村、木曽町、上松町、南木曽町、木祖村、王滝村、大桑村
南信地域
諏訪市、岡谷市、茅野市、伊那市、駒ヶ根市、飯田市、下諏訪町、富士見町、原村、辰野町、箕輪町、飯島町、南箕輪村、中川村、宮田村、松川町、高森町、阿南町、阿智村、平谷村、根羽村、下條村、売木村、天龍村、泰阜村、喬木村、豊丘村、大鹿村
東信地域
上田市、東御市、佐久市、小諸市、坂城町、青木村、長和町、軽井沢町、御代田町、立科町、小海町、川上村、南牧村、南相木村、北相木村、佐久穂町
北信地域
長野市、千曲市、須坂市、中野市、飯山市、信濃町、小川村、飯綱町、山ノ内町、木島平村、野沢温泉村、栄村、高山村
新潟県
妙高市、上越市、糸魚川市、柏崎市、十日町市、長岡市、小千谷市
山梨県
北杜市、甲府市、韮崎市、甲斐市、笛吹市
岐阜県
飛騨市、高山市
この記事の執筆者・監修者
山岸 淳一 (Junichi Yamagishi)
長野県を拠点に活動する「野生動物の仕分け屋」。かわほりプリベント代表。動物と人間との曖昧になった境界線を整えることを使命とし、重要文化財から一般宅まで実績多数。SBC信越放送「もっとまつもと!」にレギュラー出演中。三度の飯よりコウモリが好き。
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