こんにちは、かわほりプリベントの山岸淳一です。
私はSBC信越放送ラジオ「もっとまつもと!」(公式ページ:外部リンク)で、毎月第4木曜日に野生動物対策の専門家として、コウモリなどの話をしています。そのリスナーさんから「コウモリの尿被害」について質問メールが来ました。
「家の外壁についた白いコウモリの尿の汚れが、なかなか落ちないです。なぜでしょうか?」
長野県松本市在住のAさんありがとうございます。
コウモリの尿の話は、深掘りしていくとかなり奥が深いテーマです。
実際、私へのコウモリの相談で、自宅の外壁に白く垂れたような筋状の跡で悩んでいるというお客様が少なくありません。
コウモリの尿の汚れは、単なる水分が乾いただけのシミではなく、コウモリの体内で濃縮された成分が外壁表面で結晶化し、時間とともに塗膜や下地を変質させてしまった現象であることがわかっています。
この記事では、外壁の色や素材によってコウモリ尿のシミがどう見えるか、いったいコウモリの尿と壁に何が起きているのかを、成分・生理・行動の3つの視点から解説していきます。
ただし、コウモリの尿の話は、語りたいことが多すぎて、とても長くなってしまうので、記事を2つに分けます。
- コウモリの外壁尿被害の原因編 (今回記事)
- コウモリの外壁尿被害の対策編 (次回記事)
という形で、進行していきます。
それでは、「コウモリの尿 原因編」を、かわほりプリベントの山岸淳一が、コウモリ対策の専門家として徹底的に解説していきます。
この記事のポイント
- コウモリの白い尿跡は、成分が結晶化したもの
- コウモリ尿のシミ汚れは、外壁の色や素材で見え方が変わる
- コウモリの尿成分と落ちない汚れ・劣化被害になる理由
- ナイトルースト「コウモリはいつどこで尿をしてシミを作るか」
- コウモリ尿の安全性と危険性
- まとめ:外壁のコウモリ尿被害は“汚れ”よりも劣化として向き合う
外壁塗装にコウモリの白い尿跡が残る「原因」写真集|成分の結晶化と素材の関係
コウモリの尿が外壁にかかると、白い雨だれの筋のような汚れになったり、尿とフンや埃が混ざることによって黒っぽい汚れになります。
現場で撮影したコウモリの尿の色の変化写真
まず、コウモリの排出直後の尿は液体であり、色は透明〜黄色です。外壁に付着してから時間がたつにつれ、水分が蒸発していきます。


なぜコウモリの尿跡は、外壁で白いシミ汚れとなるのか?理由は成分の結晶化にある。
外壁に残る白い汚れの正体は、コウモリの尿から水分が蒸発し、残った成分である尿素・塩分・尿酸などが結晶化して固形になったものです。
この結晶が白い粉状の筋として浮き出たり、あるいは糞や埃と混ざり合うことで、黒ずんだ独特の流れシミを形成します。
この時に、尿に含まれる成分が建材と反応したり、建材を劣化させたりすることで、白っぽく見えることもあります。
コウモリの尿に糞が混じった場合の外壁汚れの比較


コウモリの尿汚れが目立つ外壁塗装の素材と色、目立たない色の特徴写真
コウモリの尿や汚れがどのように見えるかは、外壁の色と素材によっても変わります。

- 明るい塗装外壁(クリーム・ベージュ・ホワイトなど)
- 比較的、コウモリの尿が「白い筋」としては目立ちにくい色です。ただし、外壁の汚れやコケと混ざることで、光の当たり方によって雨だれのようなシミが浮き出て見えることがあります。
- きれいなホワイトの壁は、外壁の汚れと尿が混じることで、汚れた雨だれシミのように見えることがあります。
- 濃い塗装外壁(黒、ブルー、濃いグレーなど)
- 圧倒的にコウモリの尿が目立つ外壁です。コウモリの尿による外壁の化学変化(エッチング)によって塗膜のツヤが抜けた部分と、尿の白い結晶とのコントラストが非常に強く出る傾向があり、「真っ黒なキャンバスに白い線を描いたような、くっきりした白いシミ」として際立ちます。
- レンガ、石材、タイル
- 素材そのものの色が濃く、表面に土埃や水垢が付きやすいため、尿の成分が外壁のチョーキング粉(塗装が劣化して粉を吹く現象)やスス・土埃・雨だれの汚れと混ざり合い、「白い部分」と「黒っぽい部分」が混じった濃淡のある流れシミになることが多いです。
- 玄関床面タイルなど尿が落ちると、これも黒いシミとなります。
写真でみる!濃い色の外壁塗装は白い尿汚れが目立つ
外壁の素材に関わらず、基本的には濃い色のほうが目立つのは間違いないです。
ただし、それはコウモリがどれくらいの頻度で、どれくらいの数が飛来しているのかで変わります。


ガルバ鋼(ガルバリウム板金)の外壁とコウモリの尿被害の影響

このセクションの最後に、ガルバリウム板金を使用した外壁の被害について触れておきたいと思います。
ガルバリウム外壁にコウモリの尿がかかった場合、他の外壁のように「白い汚れが乗っている」ように見える状態ではなく、表面そのものが退色したような跡が残る点が特徴的です。
こうした現象は、後述する尿成分とそれに伴う化学作用の影響によるもので、白い汚れ自体を除去できても、その下には消えないシミが残ってしまうという厄介さがあります。
なお、外壁のコウモリによる汚れの問題は日本に限ったことではなくて、海外の歴史的建造物の調査でも、コウモリの糞尿が石材表面に白い結晶ともに暗色の染みや流れ跡を作ることが報告されています。
次は、「尿によって何が起きているのか」を尿の成分と濃さの面から見ていきます。
コウモリの尿成分の比較:コウモリと人間で何が違うのか?
尿とは、腎臓が血液をろ過して「いらない水分」と「老廃物」「余分な塩分」をまとめて体外へ出すための液体です。
人間もコウモリも哺乳類ですから、この仕組みは同じです。
そして尿の成分を調べてみても、人間とコウモリでは、実はほとんど変わらなかったのです。
コウモリには、次のような物質が水に溶けた状態で含まれています。
- 尿素(タンパク質を分解したあとの代謝産物)
- ナトリウム・カリウムなどの塩分
- クレアチニン
- 尿酸 など
私たちもコウモリも、食べ物に含まれるタンパク質を代謝し、余った窒素を尿素や尿酸の形で捨てることで、体内のバランスを保っています。
違いが大きいのは、成分ではなく、「尿の濃さ」です。
これが、外壁に強いシミやエッチングを残す原因のひとつになっています。
アブラコウモリの高濃度な尿が外壁塗装にシミと被害を生むまで
日本の一般住宅で外壁被害の中心になるのは、アブラコウモリ(学名 Pipistrellus abramus)という名の食虫性コウモリです。食虫性コウモリたちの尿がなぜ人間より濃いのかを、生理の面から見ていきます。
コウモリの尿は、人間より濃い
コウモリの尿の濃さを人間の尿と比較してみます。
尿の「濃さ」を比べるときには、どれだけ多くの成分が水に溶け込んでいるかを示す「尿浸透圧」という指標を使います。これは、1kg の水の中にどれくらいの粒(尿素や塩分など)が詰まっているかを数値化したもので、値が大きいほど濃い尿ということになります。
人間では、一般的な24時間尿の目安が300〜900 mOsm/kg程度と言われています。
では、尿をどこまで濃くできるかという最大濃縮能力で比べてみます。
| 人間の尿 | 食虫性コウモリの尿 | |
| 最大尿浸透圧 | 1,000〜1,200 mOsm/kg | 2,640〜4,340 mOsm/kg |
コウモリの尿は、人間より少なくとも2〜3倍以上の濃さです。哺乳類の中でも高い数値と言えます。
※ここで示している食虫性コウモリの数値は、季節や食後かどうかで変動する尿のうち、「どこまで濃くできるか」という最大尿浸透圧(最大濃縮能力)の研究を比較の目安として用いたものです。
コウモリは、水分を限界まで再利用する。だから「高浸透圧尿」になる。
コウモリの尿はなぜ濃くなるのか。大きくわけて2つの理由があります。
体の中に水をたくさん貯めると、そのぶん体重が増えて飛行コストが上がります。そこで腎臓を発達させて、できるだけ水を再吸収し、老廃物だけをギュッと濃縮して捨てるようになった。
コウモリは、冬眠中や昼間に屋根裏などでじっとしているあいだは、水を飲みに行くことができません。その間に体内の水が減りすぎないよう、尿の量を減らしつつ、必要な排泄は「さらに濃い尿」にまとめておこなうようになった。
コウモリは体内の水分を再利用し、節約することで、現在のコウモリへと進化してきたのです。

昆虫食が生む「タンパク質代謝物のかたまり」
ポイントは、本州に生息するコウモリがすべて「小型昆虫」を主食としていることです。昆虫の体は主にタンパク質で構成されています。
このタンパク質を分解する過程で、尿素や尿酸などの老廃物が大量に発生します。コウモリはこれらを最小限の水分で排泄するため、結果として「多くの成分が凝縮された濃い尿」となるのです。
コウモリの尿が外壁をエッチング(浸食)し、「落ちない汚れ」になる理由
外壁に付着したコウモリの尿跡を単なる汚れとして扱うことは、実際の被害状態を見ている私の感覚だと、かなり違和感があります。
なぜなら現場では、コウモリの尿によって、外壁の塗膜や下地そのものが物理的に傷んで、変質してしまっているケースが多く見られるからです。
コウモリの尿によって外壁が傷む過程
コウモリの尿に多く含まれる「尿素」は、外壁表面にある酵素(ウレアーゼ)などの働きによって分解され、アンモニアへと変化します。このアンモニア(アルカリ性成分)は、塗装の主成分である「合成樹脂」の網目構造を弱らせ、長期的なダメージを与えます。
こうした化学作用により、表面が溶けて曇ったりざらついたりする現象をエッチング(表面侵食)と言います。コウモリの尿が固まっていく過程で、塗装面をじわじわと侵食し、表面を傷めてしまうのです。
ダメージを受けた樹脂は、本来の滑らかさを失い、ミクロン単位の凹凸や微小な孔(あな)が無数に生じた状態になります。
一度この状態(エッチング)が進むと、その微細な凹凸の中に尿由来の結晶が深く入り込んで固着します。そのため、単に表面を摩擦でこすり落とすだけでは、汚れを完全に取り除くことが困難になるのです。

外壁の塗装表面が傷むことで、白っぽく浮き上がるように見えるケースもあります。
コウモリの尿に含まれる「尿酸や塩類」が外壁下地に与える被害と影響
ここまでは、エッチングによって表面が傷むという話をしました。
では、白い結晶の影響も考えてみます。
コウモリの尿跡に残る白い結晶には、尿酸やさまざまな塩類が含まれています。
これらは時間の経過とともに塗装表面だけでなく、その奥にある「下地材」や「金属部材」にも影響を与え、長期的な腐食の一因となることがあります。
アルミやスチールなどの金属部材に尿成分が長期的に付着すると、周辺の環境条件(湿気・雨水など)と相まって酸化反応が進みやすくなります。その結果、通常よりも早くサビが発生・進行し、部材の寿命を縮めてしまう可能性があります。
サイディングなどのセメント系下地材では、尿由来の成分や再溶解した塩類が表層に浸透することで、わずかずつ組織が脆くなると考えられます。その結果、外壁の一部が欠けやすくなったり、局所的に強度が低下したりする恐れがあります。
尿に含まれる成分は、一度乾燥して結晶化しても、湿気や雨によって再び溶け出し、何度も建材に作用します。
このように、コウモリの尿の残留物は、目に見える「汚れ」としての問題にとどまらず、建物を構造レベルでじわじわと傷め続ける「長期的な侵食因子」として、継続する可能性があるのです。

自宅外壁のナイトルースト:コウモリはいつ、どこで、尿をして、シミ汚れを作るのか
コウモリが外壁にとまって排尿することによってできた汚れやシミの「場所」、そして「尿の濃さ」。これらは、コウモリの行動パターンと密接に結びついています。
外壁でコウモリが逆さまにぶら下がることには理由がある

例えば、住宅街で一番よく見かけるコウモリであるアブラコウモリ(学名: Pipistrellus abramus)という種類のコウモリです。
彼らは夜行性です。日没後しばらく飛び回って餌となる昆虫を捕食したのち、その食べた昆虫を消化しながら休憩をします。
休憩場所は、軒の下や入隅など、薄暗くて雨に当たらない場所の外壁に、へばりつくような姿勢でぶら下がって休みます。この夜の休憩行動や休憩場所のことをナイトルーストと呼びます。
1回のナイトルーストは、短い場合で30分程度、長いと数時間に及ぶこともあり、その間に壁面にぶら下がりながら何度も少量ずつ排尿・排糞を繰り返します。
このため、ナイトルーストの外壁では、同じ場所に尿によるシミが何層にも重なり、結晶の層とエッチングが集中的に進行しやすくなります。この仕組みで、コウモリが利用する外壁は、どんどん傷んでいってしまいます。
飛び立つときの数滴の尿がつくる点状のシミ
コウモリは、ナイトルーストから再び採餌に出る直前や、戻ってきた直後にも排尿することが多く、その尿が外壁の少し離れた位置や、直下の地面・窓枠・水切りなどを点状に汚すことがあります。
その結果として、
- ナイトルースト:白い(または黒っぽい)筋状・帯状、雨だれのような汚れが集中する
- その周辺:雨垂れ筋状ではなく、点状や雫の形をしたシミ汚れや短い流れ跡がつく
といったパターンが現れやすくなります。

ナイトルーストか?侵入か?この特定が、駆除対策の第一歩
垂直な壁面に残るコウモリの尿の跡は、尿の粘度・重力・外壁表面の粗さによっても形が違ってきます。
尿の汚れの点・長さ・広がり方を観察することで、コウモリがナイトルーストしている場所や侵入している場所を、昼間でもある程度の目星をつけることができます。
例えば、1階玄関に夜中にナイトルーストに飛来している場合と2階軒下から建物内に侵入している場合では、尿や糞のつき方が変わってきます。
特に、建物内にコウモリが出入りしている場合は、その出入り口周辺だけ集中して点状の尿や落下した糞が痕跡として表れることがあります。
これらは「どこでなにを重点的に対策するべきか」を判断する材料になります。
コウモリ尿の安全性と危険性
なぜコウモリの尿は衛生上のリスクが指摘されるのか:海外の研究報告とウイルス媒介について
外壁に残ったコウモリの尿跡を見ると、健康面についても心配される方がいます。この点も整理しておきます。
世界では、フルーツコウモリ(果実食の大型コウモリ)が関わるウイルス感染症(ニパウイルスなど)の報告があります。
ウイルス学的に見れば、コウモリの尿は「ウイルスや細菌を運ぶ可能性のある体液」であることは、海外の研究から報告されていることは確かです。
なぜ日本国内のコウモリ尿は海外事例とリスクが異なるのか:食性・生活圏の違いと感染症について
一方で、日本本州の住宅周りに現れるのは、アブラコウモリを代表とする食虫性コウモリです。
日本のコウモリは、ニパウイルスなどで問題となる熱帯のフルーツコウモリとは食性や生活圏、関わる病原体の種類が大きく異なります。
現時点で、日本本州の一般住宅において、「外壁に付着した食虫性コウモリの尿が原因で重い感染症が発生した」という医学的報告は見当たりません。
外壁のコウモリの尿シミを見たからといって、ただちに命に関わる病気を心配しなければならない状況ではない、というのが現実的な位置づけです。
建物の中である室内の生活空間と、外壁部分はわけて考えることが適切です。
コウモリが建物内、それも室内に住み着くとこうなる
せっかくなので、コウモリが建物内に生息した場合の画像をご紹介します。この白い汚れはすべてコウモリの尿です。コウモリの尿は結晶化するということがよくわかっていただけると思います。
外壁にいるのか、建物内にいるのか、室内まで入ってくるのか。これによって健康へのリスクは大きな差が出るというというのが私の見解です。

屋外にあるコウモリの尿や糞に対する衛生上の基本的スタンス
日本のコウモリの尿から、重篤な感染症が発生していないとはいえ、コウモリは野生動物であり、尿や糞には細菌やカビなど何らかの微生物が含まれている可能性はあります。
糞尿の清掃時に舞い上がったホコリを吸い込んだり、素手で触れたあとに口や目をこすったりすれば、体質によっては咳・のどの違和感・体調不良などを起こす可能性もゼロではありません。
コウモリやその尿や糞などの排泄物と接触する場合は、次のような基本的な対策をすべきです。
外壁のコウモリの尿の清掃と消毒方法
- 清掃時は、使い捨て手袋・マスク・長袖を着用する
- 外壁のコウモリの尿の清掃洗浄は、使い捨てウェットシートで拭き取り、水洗い、中性洗剤が推奨です
- 外壁の尿に消毒は不要です。どうしても気になる場合はアルコールにとどめて下さい。尿で傷んだ外壁をさらに悪化させる可能性があります。
- 作業後は石けんでの手洗い・うがいを行う
- コウモリやその糞尿に接触したあと、発熱や強い倦怠感、呼吸器症状など「いつもと違う体調」が続く場合は、早めに医療機関に相談する
世界には危険なコウモリ由来感染症も存在しますが、日本本州のコウモリの尿については、必要以上に恐れすぎず、それでも野生動物としての距離感は保つことが重要です。
この記事のまとめ
ここまで見てきたように、外壁のコウモリ尿による白い筋や黒っぽい流れシミは、単なる「汚れ」にとどまりません。
- コウモリの高濃度の尿が外壁に付着し、乾燥して結晶がこびりつく
- それが原因で外壁塗装面が白いシミ汚れに見える
- 尿素が分解して生じるアンモニアなどのアルカリ成分が塗膜にダメージを与え、表面がエッチング(浸食)される
- 尿酸や塩類が下地材に長期的な腐食・脆弱化をもたらす
といった複数のプロセスが重なり、外壁の汚れと素材の劣化が混ざった状態になっていると考えたほうが実情に近いです。
そのため、目の前に見えているシミを、力任せの清掃で「完全に元通り」に戻そうとすることは、外壁の塗膜や下地をさらに傷めてしまうことにもなりえます。
- どこまでを「まだ落とせる汚れ」として、外壁を傷めない範囲で減らすか
- どこからを「すでに変質した塗膜・下地の劣化」として受け止め、補修や塗り替え、飛来防止に発想を切り替えるか
これらを分けて考えることが重要です。
コウモリの外壁被害、とくに都市に適応したアブラコウモリによる糞尿被害は集中しやすく、そして継続しやすいものです。
コウモリの尿被害があまりにひどいようであれば、汚れを除去するのではなくて、コウモリを壁に止まらないようにする対策に移行するなど、被害の度合い、外壁の素材や塗装の時期などを考慮して、次に取る対策を検討していくことが重要です。
コウモリの尿が強酸性というデマと、ハイター10倍で消毒という誤った消毒方法への注意喚起(2026年2月7日追記)
2026年2月現在、「コウモリの尿は強酸性で危険」「外壁の糞尿消毒にはハイター10倍希釈が有効」といった誤った情報が、AIの回答やネット記事を通じて拡散されています。
これは生物学・化学・公的ガイドラインのいずれとも矛盾しており、そのとおりに実行すると人体と建物の両方に重大な危険があります。
AI及び一部ネット記事の間違った主張・回答


上記のGoogleAIの誤った回答
- 「コウモリの尿は強酸性で危険」「コウモリの尿は強い酸性だから外壁を傷める」という主張
- 外壁のコウモリの糞尿消毒にはハイター10倍希釈液を推奨
上記AIの回答に対する反論
1. 「強酸性」という主張は、解剖学的・生物学的に誤りです
哺乳類において、自らの体を焼き切るような強酸性の尿を排出する種は存在しません。コウモリの尿がpH 5.3〜6.8(弱酸性〜中性)であることは、実測データが示す事実です。
この誤情報は、「酸をアルカリで中和する」という誤った判断を誘発し、塩素系漂白剤との混合による有毒ガス発生の化学事故を招く恐れがあり、極めて危険です。
2. 「ハイター10倍(6,000 ppm)」は異常な高濃度であり、誤りです
ハイターやキッチンハイター(次亜塩素酸ナトリウム約6%)を10倍に薄めると、濃度は約 6,000 ppm(0.6%) に達します。
厚生労働省などの基準と比較すると、その異常さが浮き彫りになります。
- 一般的な環境消毒(ドアノブや床等)の基準: 約200~500 ppm
- AI推奨の10倍希釈液: 約6,000 ppm
ノロウイルスや新型コロナウイルス対策基準の12~30倍もの高濃度を推奨することは、清掃の常識を逸脱しています。
3. 異常な高濃度使用が招く2つのリスク
- 身体への危険: コウモリ尿から発生しているアンモニアに、30倍濃度の次亜塩素酸ナトリウムの使用は、有毒ガス(クロラミンガス)が発生する恐れがあります。
- 建材へのダメージ: 既に尿の化学作用で脆弱化している外壁表面に高濃度の塩素の使用は、塗装樹脂の分解を加速させ、さらなるダメージを与えることになります。
外壁のコウモリの尿に対する安全な洗浄・消毒方法
外壁に付着したコウモリの尿については、「水洗い」または「中性洗剤を薄めたもの」での洗浄で十分です。どうしても消毒が気になる場合は、水拭き後にアルコール(エタノール)での拭き取りを推奨します。
次回予告
次回の記事では、今回の記事を踏まえたうえで、外壁をできるだけ傷めずに行う清掃・対策の手順、やめておくべき清掃方法、そしてコウモリのナイトルーストをやめさせるための具体的な飛来防止対策について、現場での経験にもとづいて詳しく解説していきます。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
この下の方には、コウモリの尿についてよくある質問と、参考文献、そしてコウモリ駆除対策の費用や流れがわかる完全ガイドの記事リンクを記載しました。興味のあるかたは、ぜひお読みください。
次回記事配信は2026年3月末を予定しています。
コウモリの尿について、よくある質問
コウモリが出した直後の尿は、多くの哺乳類同様に弱酸性~ほぼ中性の範囲です。
そして、時間が経つと尿素が分解してアンモニア(アルカリ性)が発生します。
確かにネット記事や一部のAIで「コウモリの尿は強い酸性」「強酸性」といった情報が見られますが、それは明確な間違いです。恐怖を煽るインチキです。
コウモリは強酸性の尿を生成できる器官も、強酸性に耐える尿道も持ち合わせていません。そもそも地球上に存在する生物で、強酸性の尿を出す生き物など存在しません。
もしいたら、生物学や哺乳類学の教科書が全部ひっくり返ります。
日本本州の住宅で、外壁についた少量のコウモリ尿が原因で重い感染症になったという医学的な報告は見当たりません。
続編記事で詳しく書く予定ですが、金タワシ・硬いブラシ/強酸・強アルカリは適していません。
外壁素材によっては高圧洗浄も、避けたほうが無難です。
はい。同じと考えて良いと思います。理由は、日本本州に生息しているコウモリはすべて「食虫性コウモリ」だからです。
外壁に飛来するコウモリは、アブラコウモリ以外にも複数種いますが、尿が濃くなる仕組みは同じです。日本本州においては、尿の危険性を種で区別する必要はないと考えています。
コウモリの尿に含まれる尿酸などの成分が、乾燥と雨水をくり返す中で結晶化して白く残り、塗装面を荒らしながら白いシミとして目立つようになるためです。
また、塗装表面が傷むことで、艶がなくなることで白っぽく見えることもあります。
コウモリの尿の清掃洗浄は以下の方法を推奨しています。
・使い捨てウェットシートで拭き取る
・水洗い
・洗剤を使いたい場合は、中性洗剤です。
いずれも外壁の素材や傷み具合で変わりますので、見えない部分でテストしてから清掃洗浄をおこなってください。
外壁の尿に、消毒は不要です。水洗い、拭き取りなど清掃洗浄をすれば十分です。
どうしても気になる場合は、アルコール拭き取り程度にとどめて下さい。
薬剤噴霧、特にハイターなどの塩素系は、尿の化学反応で傷んでしまった外壁をさらにダメージを与え悪化させる可能性がありますので、推奨していません。
参考文献
1,コウモリの食性と尿濃度の相関関係についての研究
Studier EH, Wilson DE. “Natural urine concentrations and composition in neotropical bats.” Journal of Comparative Physiology B. 1983.
https://deepblue.lib.umich.edu/bitstream/handle/2027.42/25423/0000872.pdf?sequence=1
2.イギリスの歴史的な教会において、食虫性コウモリの排泄物(糞や尿)が内部の文化財や建築素材に与える損傷メカニズムの研究
Hales JFD. “Bats in Churches: Objective Assessment of Associated Damage Mechanisms.” Archaeology International. 2014.
https://journals.uclpress.co.uk/ai/article/id/2014/
3.英国のコウモリ保護団体(Bat Conservation Trust: BCT)による、コウモリの排泄物と健康に関するガイドライン
Bat Conservation Trust. “Bat droppings and urine – Bats and health.” Bat Conservation Trust website. 2025.
https://www.bats.org.uk/about-bats/bats-and-disease/bat-droppings-and-urine
山岸 淳一(Junichi Yamagishi)
かわほりプリベント代表。長野県を拠点に、野生動物や害虫の駆除・対策を専門としています。「野生動物の仕分け屋」と称し、動物と人間との曖昧になった境界線を整えることが使命です。個人宅から大学病院、重要文化財、古墳まで実績多数。SBC信越放送ラジオ番組「もっとまつもと!」内のコーナー「かわほり先生の生き物万歳」(毎月第4木曜16:20頃~)にもレギュラー出演。三度の飯よりコウモリが好き。

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