長野県を拠点に野生動物・害虫の侵入メカニズムを研究している、かわほりプリベントの山岸淳一です。
令和8年3月8日、宮崎県薬剤師会が主催する「令和7年度 第2回学校薬剤師全体研修会」において、120分のメイン講師を務めました。宮崎県の会場およびオンラインで受講いただいた薬剤師の皆様に、心より御礼申し上げます。
学校薬剤師の皆様は、学校環境衛生基準に基づき、児童生徒の健康を守るための定期検査を担う公衆衛生の専門家です。しかし、ダニやネズミ、コウモリといった野生生物の生態や、殺虫剤の成分特性に基づく具体的な防除フローを体系的に学ぶ機会は多くありません。
私自身も、質疑応答や事後のやり取りを通じて、学校現場における薬剤師の方々の葛藤や実務上の課題を直接伺うことができ、非常に多くの学びを得る機会となりました。
研修会プログラム概要

研修名:令和7年度 第2回学校薬剤師全体研修会
日時:令和8年3月8日(日)9:05から11:05(120分)
開催形式:対面講演及びZoomウェビナーによるオンライン研修
演題:現場のプロが教える学校施設の野生生物・害虫対策と市販殺虫剤の科学的活用フロー
講演内容のハイライト:科学的根拠に基づく防除戦略
当日の120分の講演では、学校で問題となる野生動物や害虫に絞って、動物行動学や生物学的なエビデンスに基づいた防除戦略を解説しました。
1.住宅や学校で問題となるコウモリの生態と健康被害について

日本に生息する35種類のうち、家屋を利用する種は10種類です。宮崎県内でも11種類の生息が確認されています。
主なコウモリの健康リスクやウイルス、現場で対応する場合の正しい知識などをお伝えしました。
2.殺虫剤の科学的活用と待ち伏せ作戦について

殺虫剤の特性と効果的な使用方法についてお話しました。
昆虫の背甲は薬剤を弾きやすいため、空間噴霧よりも、床や壁に塗布して足の裏から吸収させる待ち伏せ作戦が論理的に優れています。ホコリが薬剤を吸着し、油汚れが弾いてしまうため、散布前の清掃が成否を分ける最大の鍵となります。また、溶剤特有の臭いの強さと毒性の強さは無関係である点についても言及しました。
3.ネズミ対策の心理戦やダニの種類によって異なる防除方法
ネズミは罠を避けるのではなく、環境の変化を本能的に恐れます。作動させない罠を数日間配置することで、安全な置物だと学習させる手順を解説しました。
室内ダニ対策においては、薬剤よりも湿度60パーセント未満の維持と、掃除機による物理的な除去が有効といったお話をさせていただきました。

4.駆除業者の適切な選定視点について
駆除業者を選定する際、1回の作業で初期費用が安い作業代行型と、問題を解消するまで対応する解決型の見積もりの違いを理解する必要があります。学校の事務長など決定権を持つ方に対し、状況に合わせた適切な助言を行うための視点を提供しました。
実務をサポートする4つの講演資料(後日配布)
私の講演では、その場限りの知識提供で終わらせないことを重視しています。今回の宮崎県薬剤師会様向けには、受講後の質問内容や現場の反応を反映し、より実用性を高めた4つの資料を後日配布いたしました。
1.講義内容の完全サマリー
講義の核心を網羅し、学校薬剤師が現場ですぐに振り返りが可能な復習用テキストです。
2.プロ推奨の市販殺虫剤一覧
ドラッグストアやホームセンターではたくさんの殺虫剤が販売されていて、薬剤師の方でも選ぶのは難しいと思います。その点を解決すべく、プロの業者から見た「推奨できる市販殺虫剤一覧」をその根拠と使い方をセットでリスト化しました。
3.学校特化型:害虫害獣 初期判定フローチャート
学校薬剤師さんに対する「何かが出た」という相談に対し、簡単な初期対応フロート、その後のネズミ、ゴキブリ、吸血昆虫など、的確な対策へ分岐させるための学校現場専用マニュアルです。
4.トラップ購入と使い分けガイド
ネズミ用粘着シートと調査用昆虫トラップの違いや、専門卸売サイトの紹介など、学校備品の購入と安全管理に直結する実践ガイドです。
薬剤師会・学校保健関係の皆様へ
毎年、研修会のテーマ設定に悩まれているご担当者様は少なくありません。かわほりプリベントでは、現場の最前線で得た生物学的知見と、翌日から使える実践的なツールをセットにした講演を行っております。
私が実際に現場で撮影した画像や映像を使って解説します。トコジラミの人間吸血動画、コウモリの生態動画など豊富なコンテンツを、ニーズに沿って選定して講演に使用しています。
全国の薬剤師会、教育委員会、学校保健関係の皆様からの講師依頼を随時受け付けております。対面での登壇はもちろん、今回のようなオンライン形式での実施も可能です。研修会のテーマ設定に悩まれているご担当者様は、ぜひお気軽にご相談ください。
講演についてはこちらに詳しく書いてあります。
この記事の執筆者・監修者
山岸 淳一 (Junichi Yamagishi)
かわほりプリベント代表。長野県を拠点に、コウモリや野生動物の研究をしながら、駆除対策の依頼には直接現場で対応している。動物と人間との間に生じた曖昧な境界線を整えることが使命。研究の専門領域は、長野県に生息するコウモリの生態研究(特に上高地や乗鞍高原など山岳地帯の希少種コウモリ)と、コウモリや野生生物の住宅や建築物への侵入メカニズムの解析研究。ハウスメーカー住宅から大学病院、重要文化財、古墳まで駆除対策の実績多数。SBC信越放送ラジオ「かわほり先生の生き物万歳」(毎月第4木曜)にレギュラー出演中。三度の飯よりコウモリが好き。

