コウモリの出巣(しゅっそう)とは何か?|専門家が教える定義と現場考察シリーズ1

【30秒でわかる】コウモリの出巣まとめ

コウモリの出巣とは?

コウモリが夜の活動(エサ探し)のために、ねぐらから飛び出す行動です。

アブラコウモリの出巣の時間帯は?

日没後、約12分後がコウモリの活動開始の目安です。

コウモリの個体やコウモリの種類による時間差は?

アブラコウモリは明るいうちに出る「早出し」個体もいます。ウサギコウモリなどは完全に暗くならないと出ないなど、個体差や種間差があります。

アブラコウモリの出てくる場所と時期は?

2階以上の高所だけでなく、1階の低い隙間からも出巣します。春から秋にかけて活動が多く、冬はそもそもあまり出てきません。

コウモリが住家(ねぐら)から出てくること

こんにちは。かわほりプリベントの山岸淳一です。今日はコウモリの出巣の解説回です。

例えば、アブラコウモリは住宅や建物に住みますが、何時に家を出て、何時に帰ってくるか知っていますか?

まれに「早朝でかけて、夕方帰ってくる」と思っている方もいらっしゃるんですが、コウモリは夜型です。

天気にも左右されます。コウモリは巣(ねぐら)から出るときは短時間に次々と出て、帰りはそれぞれまちまちで戻るということが多い。

そんなコウモリが虫を食べに出ていくことの話の回です。それで、よろしくお願いします。

コウモリの出巣(しゅっそう)の定義

出巣とは、コウモリが夜間の活動を開始するためにねぐらを離れる行動です 。

アブラコウモリは、日没後の照度が低下するタイミングで出巣しますが、これには明確な理由があります。

天敵との駆け引き
日没前の明るい時間は、鳥などの天敵に見つかるリスクが高まります。

そのため、基本的には暗くなるのを待ちます。
主食の虫の活動時間が近づく
一方で、コウモリの主食である昆虫は日没前後に最も活発になります。

ただし、リスクを冒してでも「早出し」をする個体(特に授乳中のメスや成長期の若獣)は存在します。

コウモリが住宅巣から出てくる時間目安は、日没後12分

アブラコウモリはねぐら(住宅の巣)から、日没の12分後から飛び出す

建物に住むアブラコウモリは、天井裏や壁の中で日没を待っています。

じっと待っているわけではなくて、少し前からガヤガヤ、ガサゴソと天井裏を這いまわるコウモリたちもいます。

「何時に出てくるか」は、日没時刻だけでなく気温や天候に左右されます。

建物1階軒天内部に多数のコウモリが集まり、各方向に移動している様子(長野県安曇野市、赤外線カメラ撮影)
長野県安曇野市の住宅1階軒天内部で撮影されたアブラコウモリたちの行動記録。赤外線カメラにより、複数の個体が壁面にぶら下がりつつ、左右上下に活発に移動する様子が確認できる(2025年5月撮影)

この画像は2024年5月14日の天井裏に仕掛けたカメラの画像なんですが、まさに今どんどん外に出ているタイミングで撮影しました。

ちなみに、この日の日没は18:45分頃でした。ちょうど時間通りですね。

建物から飛び出し始める時間の目安は
日没から約12分後
安定した活動期(5月〜9月)には、この時間から最初の個体が確認されることが多いという研究があります。
地域や季節によって変動します。

日没表

でも、日没は時期や地域によっても違います。ということで、日没時間表を作ったので見てみましょう。

2025年 日没時間比較表(各月1日基準)

コウモリの出巣(活動開始)の目安となる日没時刻です。※松本市は国立天文台データ参照

長野(松本) 東京 大阪 福岡
1月1日16:4516:3816:5817:21
2月1日17:1517:0817:2717:49
3月1日17:4317:3517:5418:14
4月1日18:1118:0218:2118:40
5月1日18:3818:2818:4719:04
6月1日19:0418:5219:1219:28
7月1日19:1319:0119:2119:37
8月1日18:5718:4619:0519:22
9月1日18:1818:0818:2518:44
10月1日17:3317:2517:4117:59
11月1日16:5316:4617:0217:21
12月1日16:3416:2816:4517:05

※松本市周辺では北アルプスの山影の影響により、実際の照度は日没時刻よりも10〜15分ほど早く低下する傾向があります。コウモリの出巣調査の際は、余裕を持って準備することをお勧めします。

コウモリが巣から出てくる時間帯の目安が、この日没時間の12分後です。地域や季節によってだいぶちがいますね。

アブラコウモリがねぐら(巣)から出てくるピークは?

日没後12分~20分ほどがピークと言われています。

日没前に出てしまうコウモリもいますし、ずいぶん遅くに出てきたり、その日は出てこないなんてこともあります。ただし、出巣のピークを知っておくことは、調査において非常に大切です。

コウモリが家に住み着いているのかの見分け方のひとつが「日没後に観察すること」

自分の家にコウモリが住み着いているのかどうか知りたければ、コウモリの活動季節に、この日没時刻を目安にして、自宅の外にでて、家からコウモリが出てくるかを見ていればいいのです。

雨の日はでなかったりしますけれど、晴れた日に、日没から1時間ほど観察していれば、見ることができるはずです。見落としもあるので、何日か続けてみることをおすすめします。

コウモリの種類によって、出てくる時間はちがう

建物をねぐらとして利用するコウモリは複数種います。アブラコウモリは日没後すぐなことが多いですが、森林性のコウモリは暗くなってから出てくることが多いです。

長野県上田市の住宅の梁と壁の隙間から、日没に合わせて飛び出そうと待機しているアブラコウモリの群れ。焦げ茶色の毛並みと小さな耳が見える。
【アブラコウモリの出巣行動】日没時刻(18:55)に合わせて、建物の隙間に集まり外の様子を伺う個体群。(長野県上田市で2022年8月1日に撮影)

出巣箇所のポイント:高さは絶対ではない

アブラコウモリは、出巣時に一度落下してから上昇する飛行特性を持つため、1階屋根より上、2階建ての高所を好む傾向があります。

しかし、現場では1階部分から出てくることが、よくあります。

1階部分で出てくることが多い場所

・軒天の壁側の隙間

・袖瓦

・換気口、通気口

・玄関ドアの周り  

◇高いところばかり見ていると、見落とします。

山岸淳一の現場考察フィールドノート「コウモリの出巣編」

11月の「小春日和」が招く、冬眠前のラストスパート

信州の11月。夜はだいぶ寒い日もあるんですが、日中ポカポカと暖かい「小春日和」の日は要注意です。

アブラコウモリは気温15℃以下で活動が鈍るとされていますが 、近年の高断熱住宅の屋根裏は、日中の熱を逃さず夜まで暖かく維持されます。

彼らにとって、その暖かさは「まだ冬眠には早い」という合図。

1,000m近い高地でも、暖かい日の夕方には驚くほど活発に出巣することがあります。「もう冬だからいないだろう」という素人判断での閉塞工事は、中にコウモリを閉じ込める結果を招きます。

教科書的には、コウモリが出るにはある程度の高さが必要。だが……

アブラコウモリの飛翔をカメラで解析すると、出てくるときはこう落下しながら加速するんです。ホバリングができるようなコウモリの種類だと勢いをつける必要はないんですが、アブラコウモリはそうはいかない。

しかし、実際の現場では、アブラコウモリは人間の目線くらいの高さの隙間から出ることがあります。

また、アブラコウモリ以外の種類に至っては、足元くらいの高さをピューっと飛んで建物から出ていくコウモリもいますので、よくコウモリの種を確認しないといけません。

※ちなみに私は2025年のペストロジー学会で「コウモリの低所侵入」の研究発表をしました。興味がある方はこちらの記事もどうぞ。

2025年7月に長野県塩尻市で撮影されたトレイルカメラの映像。地面に近い非常に低い床下空間を、白い影のように映るコウモリが左から右へ飛翔している様子。
長野県塩尻市で撮影。床下空間を自在に飛翔するコウモリ。地上高数十センチという極めて低い空間も活動範囲であることを示している。

ウサギコウモリとアブラコウモリ:時間の読み分け

長野県の現場ではよくあるんですが、標高の高い別荘地などでは、アブラコウモリよりもウサギコウモリなどの相談が主役になることがあります。ここでの盲点は「出巣時間の違い」です。

まだ明るさが残るうちに出始めるアブラコウモリに対し、ウサギコウモリなど森林を好むコウモリは完全に暗くならないと出てこないことがが多い。

日没後30分で「今日は出てこないな」と引き上げれば、その直後に大群が飛び出す……なんて失敗も、経験の浅い業者にはよくある話です。種を特定し、その種に合わせた「待ち」をするしかありません。

ちなみにコウモリが活動開始と明るさの研究報告もあって、周囲の明るさが40〜150ルクスになったタイミングと言われています。これは、日没から少し経過し、人間の目にも「いよいよ暗くなってきた」と感じられる時間帯に一致します。

コウモリの出巣に関するよくある質問FAQ

Q
雨の日でもコウモリは出ますか?
A

強い雨や風の日は出巣を控える傾向はあります。

小雨程度であれば餌を探しに出ることもありますが、羽が濡れて体温が奪われるのを避けるため、荒天時は一日中じっとしていることも多いです。正確な調査を行うなら、天候の安定した日が最適です。

Q
冬でもこの日没時間に合わせて外を見れば確認できますか?
A

冬(12月〜3月上旬)は、この時間に見てもほとんど確認できません。 冬眠期です。

Q
アブラコウモリが夕方に出てくる時間は、日没から何分後ですか?
A

アブラコウモリの出巣時間の目安は、日没から約12分後です。

多くの学術データ(船越・内田 1978など)により、活動安定期の平均出巣時間は日没後12分前後であることが証明されています。ただし、曇天時や山影の影響がある場所では数分早まることがあるため、日没時刻の直前から観察を始めるのが最も確実です。

Q
コウモリの出巣のピーク時間はどのくらい続きますか?
A

最初の1匹が出てから「約20分間」が活動のピークです。日没12分後から始まり、その後の約20分間に群れの大部分が次々と飛び出します。ただし、中には少し遅れてマイペースに出てくる個体もいます。

参考文献

Funakoshi, K., & Uchida, T. A. (1978). Studies on the physiological and ecological adaptation of temperate insectivorous bats: III. Annual activity of the Japanese house-dwelling bat, Pipistrellus abramus. Journal of the Faculty of Agriculture, Kyushu University, 23(1/2), 95–115. https://doi.org/10.5109/23682

Osawa, K., & Osawa, Y. (2016). Biology and behavior of bats in houses and buildings; how to live with them. Urban Pest Management, 6(2), 91–95. https://doi.org/10.18999/urbanpest.6.2_91

この記事の執筆者・監修者

かわほりプリベント代表 山岸淳一

山岸 淳一 (Junichi Yamagishi)

長野県を拠点に活動する「野生動物の仕分け屋」。かわほりプリベント代表。動物と人間との曖昧になった境界線を整えることを使命とし、重要文化財から一般宅まで実績多数。SBC信越放送「もっとまつもと!」にレギュラー出演中。三度の飯よりコウモリが好き。

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